研究実績の概要 |
本研究は,膝OAにおける滑膜に発現するプロテオグリカンであるパールカンの機能の詳細および軟骨下骨や骨棘病変との関連を分子レベルで解明し, 膝OAの滑膜炎を制御しうる分子を探索することを目的とする. 膝OAマウスモデルを用いて,下記実験を計画した. ①パールカンの発現の有無による滑膜の炎症性メディエーターの発現の違いの検出.②炎症性メディエーターと軟骨下骨及び骨棘の変化を評価. ③軟骨下骨及び骨棘の変化に寄与する炎症性メディエーターとパールカンの機能解析.④標的分子による膝OAの治療効果の検討. 2019年度までに,膝OAモデルを作成したマウスにおいて, 滑膜パールカンが欠損すると組織学的滑膜炎がコントロールに比べ強く,TNFα, TGFβ, CCL21, VEGF, CD31, CD68およびCCR7の発現が上昇することを示した. 2020年度は, 滑膜パールカン欠損マウスおよびコントロールマウスより採取した滑膜をTGFβで刺激しウエスタンブロット法で解析すると, パールカン欠損滑膜では, 下流シグナルであるp-Smad2/3の発現が低下していたが, パールカンを添加することにより濃度依存性にp-Smad2/3は回復した. また, 同様にTGFβで刺激したパールカン欠損滑膜ではSmad非依存性のp-p38の発現が低下し, パールカンを添加することにより濃度依存性にp-Smad2/3は回復した. 膝OAモデルによる滑膜パールカン欠損マウス滑膜炎はTGFβシグナルが入らないことによるネガティブフィードバックの可能性が考えられるが, そのシグナル経路は複数存在する可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CPVID-19の蔓延により, 実験室の利用制限, 継続したマウスの飼育が不可になったこと, COVID-19の医療への参画により, 継続した実験の遂行が制限されたことによる. そのため, 実験の継続性が失われ, 1つの結果を出すのに時間を要し実験が遅延した.
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今後の研究の推進方策 |
膝OAにおける滑膜に発現するプロテオグリカンであるパールカンの機能の詳細および軟骨下骨および骨棘病変との関連を分子レベルで解明し, 膝OAの滑膜炎をはじめとする病態を制御しうる分子を探索することを目的とし, 昨年の結果にもとづき,TGFβ以外の炎症性メディエーターの下流シグナルの解析とそれを産生しうるマクロファージを中心に実験を行う. さらには, 炎症性メディエーター制御やその抑制薬による膝OAの治療効果の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCPVID-19の蔓延により, 実験室の利用制限, 継続したマウスの飼育が不可になったこと, COVID-19の医療への参画により, 継続した実験の遂行が制限された. そのため, 実験の継続性が失われ, 1つの結果を出すのに時間を要した。そのためマウスを用いた治療効果の実験部分において大きな遅延を要した. そのため, 2021年度にも実験の継続を申請する運びとなった. 現在COVID-19の蔓延の中でも実験を遂行する方法を確立したため, 延長した2021年度は実験の遂行が可能と考える. 予算についても2020年度の予定学会の中止や実験そのものの制限により予算の繰り越しが生じた. 本年度は,マウスに対する治療効果実験, 業績のまとめにより繰り越し予算を使用予定である.
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