研究課題
「Bladder Cancer Index (BCI)」は米国において開発された膀胱がん患者の特異的QOL尺度である。質問票の信頼性と妥当性は検証され(Gilbert, J. Urol 2010)、臨床的にも広く用いられている。本質問票を日本人膀胱癌患者にも使用できるようにするためBCI日本語版を作成、実際の日本人患者に用いて内容妥当性、内的整合性を検証した。当科に通院中の膀胱がん術後患者に対しプレテストを行い、実施上の問題点や回答上の問題点を抽出、修正した。各質問項目について対象者からの質問、泌尿器科医、臨床心理士からの意見を分析し内容妥当性を検討した。さらに、クロンバックのα係数を求め、内的整合性を検討した。本研究の実施にあたっては当院のIRBの承認を受けた(015-0504)。BCIの質問項目のうち、筧らによりValidationされたExpanded Prostate Cancer Index Composite (EPIC)日本語版の質問項目と重複するものについては、許諾を得た上でそのまま使用した。一方、EPICと異なりBCIは男女共用の質問票であるため、特に性機能の質問項目について順翻訳と逆翻訳の過程で原作者の指摘により語句の改訂が必要であった。プレテストの対象者は14名(平均年齢は69.5歳、男性9名、女性5名)であった。膀胱全摘除術+尿路変向術施行例6名、経尿道的膀胱腫瘍切除術施行例8名で、術後経過観察期間の中央値は31.5(11-272)ヶ月であった。排尿機能、排便機能、性機能の各ドメインに関するクロンバックのα係数はそれぞれ0.86、0.73、0.92で良好な内的整合性が示された。プレテストの過程で、患者から出た意見を出来るだけ反映させ、最終的に日本語版BCIを完成させた。
2: おおむね順調に進展している
多段階の検討過程を経てBCIの日本語版を作成することができている。パイロットスタディを終え、日本語版Bladder Cancer Indexを完成することができたため。
今後は。Pilot studyで完成した日本語版Bladder Cancer Indexを用いて、Validation studyを行う予定である。筋層浸潤性膀胱がん症例:膀胱全摘もしくは膀胱温存療法例 250例および、筋層非浸潤性膀胱がん症例:経尿道的膀胱腫瘍切除 250例について、北海道大学病院およびその関連約26施設と共に多施設共同研究を行う。それらの結果について、項目分析(欠損値の解析、記述統計量の算出)、尺度の信頼性(クロンバックのαによる信頼性の検討、再テスト法による尺度の再現性の検討)、尺度の妥当性(因子分析による構成概念妥当性の検討、得点の算出と、multi-trait analysisによる収束的妥当性、弁別的妥当性の検討、同時的妥当性の検討、基準関連妥当性の検討)を行う。このような過程を経て、膀胱がんサバイバーに対する包括的なQOL評価法の確立を目指す。
前年度は、膀胱全摘もしくは膀胱温存療法例および、筋層非浸潤性膀胱がん症例:経尿道的膀胱腫瘍切除例について、QOL調査を行いその回収が行われた。次年度はその解析結果を集計し、統計解析を行うことから集計のための機器等が必要とされる見込みである。また、学術論文への投稿や、学会等で発表を行う予定であるその準備のため経費が引き続き必要とされる。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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