研究課題/領域番号 |
18K09155
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大澤 崇宏 北海道大学, 大学病院, 助教 (60374443)
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研究分担者 |
伊藤 陽一 統計数理研究所, データ科学研究系, 教授 (10334236)
安部 崇重 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10399842)
篠原 信雄 北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
小笠原 克彦 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90322859)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膀胱がん / Quality of life / Patient reported outcome / 膀胱がん特異的QOL調査票 |
研究実績の概要 |
本研究では、経尿道的手術、膀胱全摘、化学放射線療法と治療方法が多岐にわたる膀胱がんに着目し、海外でも利用されているBladder Cancer Index(BCI)を翻訳し、日本語版BCIの妥当性および信頼性を検証することを目的とした。また、膀胱がんの治療方法がその後のQOLにどのような影響を及ぼしているのかを多施設共同研究の形で明らかにすることを目的とした。 北海道大学病院およびその関連施設と共に多施設共同研究を行い、計371例の症例数確保が可能であった。世界的に見ても非常に大規模な多施設共同研究となっており、本研究の成果により今後治療を受ける膀胱がん患者の治療選択や治療後のQOLに関する情報提供において大きな恩恵がもたらされると考える。その他の調査項目として、SF-12、EQ-5D、Body Image Scale、FACT-BLを用い、BCIを含めたこれらのQOL調査票データと臨床データの比較解析により、腫瘍の進行度、治療方法が治療後のQOLや晩期合併症の種類・程度とどのように関連しているかを明らかにする。 対象患者は371名(年齢中央値は71歳、男性281名、女性90名)であった。膀胱全摘除術施行例150名、経尿道的膀胱腫瘍切除術施行例221名で、術後経過観察期間の中央値は31(1-224)ヶ月であった。排尿、排便、性の各ドメインにおける機能と負担感それぞれのクロンバッハα係数は排尿(0.80、0.82)、排便(0.57、0.70)、性(0.90、0.83)で、比較的良好な信頼性が示された。また、BCI各ドメインとの相関係数はShort Form (SF)-12(0.01-0.39)EQ-5D(0.15-0.41)、FACT-BLおよび術式(0.25-0.39)と適度な相関が認められ、中でもFACT-BL(0.32-0.48)との相関が最も強く認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BCIの原版作成者であるミシガン大学泌尿器科のJohn T. Wei教授から多くの助言を得る事が可能であり、日本語翻訳版作成の許可を既に得ている。まず、日本語を母国語として英語に精通した2名の翻訳者がそれぞれ日本語訳を作成し討議した後に、1つの翻訳にまとめた。この日本語版BCIを用いて、記入およびインタビュー調査を行った。結果については、学会および論文で報告している(研究発表欄参照)。 上記に記載したが、日本人コホートの対象患者371名(年齢中央値は71歳、男性281名、女性90名)の膀胱全摘除術施行例150名、経尿道的膀胱腫瘍切除術施行例221名について術後の排尿・排便・性についての機能と負担感について解析を行っている。また、今回の日本人コホートのHealth related QOL(HRQOL)の結果と、米国ミシガン大学のBCIのValidationを行ったmodel development cohortとの直接比較を開始している、今後詳細に解析を行いこの1年で論文報告を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次世代のがん治療に求められるのは、内視鏡手術やロボット手術などの低侵襲手術により患者の臓器機能を温存し、治療による後遺症を軽減し、QOLを低下させないことである。膀胱がんにおいても、新しい術式や治療法を適切に評価することが可能な特異的QOL尺度が必要とされている。日本における膀胱がんサバイバーのアンメットニーズを明らかとすることのできる本研究の役割は非常に重要であると考えており、遅滞なく当初の計画を達成できるように研究を更に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後も、膀胱全摘もしくは膀胱温存療法例および、筋層非浸潤性膀胱がん症例について、北海道大学病院およびその関連約26施設と密に連携をとる必要があることからミーティングの準備が必要である。その準備費用の支弁を検討する必要があったため、残額を次年度に持ち越した。また、米国ミシガン大学とも緊密に連携をとり、膀胱がんサバイバーのHRQOLの解析を継続する必要があり、その解析のためのハードウェアやソフトウェア準備にも使用を予定している。
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