研究実績の概要 |
本年度は、昨年に引き続きcfDNAの遺伝子変異のプロファイリングを行い、キートルーダとの治療効果との関連を検討した。当院でキートルーダを使用した30症例の治療直前のcfDNAを抽出した。AVENIO ctDNA Expanded Kitを用いて77遺伝子について変異解析を行った。治療後6カ月以内に再度検体を採取(15症例)して、治療経過中の変化も検討した。これまで全例のシークエンスが終了した。現在データ解析が可能な21例について臨床病理学的因子との関連を検討した。ペムブロリズマブ投与による奏効率は、CR1名、PR4名、SD6名、PD7名、NE3名であった。初回liquid biopsyによるctDNA濃度と奏効率との関連性を検討したが、ctDNA濃度と奏効率には、統計的有意な相関は認めなかった。 ctDNAにおける遺伝子変異としては、TP53の頻度が最も高く、次にRB1,PTENが多く認められた。コピーナンバー増幅では、ERBB2が最も多く認められた。少なくとも1つ以上の遺伝子変異を認めた患者は16人(76%)存在し、そのうち一つ以上のdruggable geneの異常を持つものは、13人(62%)であった。特定の遺伝子変異と奏効率には統計的に有意な関連性は認めなかった。生存率に関してはctDNA濃度が高値の群では有意に全生存率の短縮を認めた。また、NRAS/BRAF/PTENの遺伝子異常を認める患者について、早期に進行を認めることが多く、これらいずれかの変異を認める群と認めない群とでは、変異を認めた群で有意な全生存率の短縮を認めた。治療経過中におけるctDNA解析により、治療経過に伴った遺伝子異常の変化の同定が可能であり、治療抵抗性の評価に有用であることが示唆された。
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