研究課題/領域番号 |
18K09216
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡江 寛明 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10582695)
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研究分担者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80253532)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒト胎盤 / 胎盤トロフォブラスト幹(TS)細胞 / エピジェネティクス / ダイレクトリプログラミング |
研究実績の概要 |
本年度は、ヒト胎盤幹(TS)細胞におけるゲノム編集法の確立を行うとともに、胎盤発生に関わる遺伝子の探索と機能解析を進めた。主な成果を以下に示す。 ①ヒトTS細胞におけるゲノム編集法の確立:レンチウイルスを用いてヒトTS細胞にCas9遺伝子を導入し、シングルセルクローニングを行うことで、Cas9高発現株を取得した。Cas9遺伝子と共に導入したGFPに対するsgRNAを化学合成し、Lipofectamineを用いて細胞に導入したところ、60-80%程度の高い効率でGFPの発現が消失することを確認した。 ②栄養膜系譜で特異的に発現する転写因子の機能解析:ヒト初期胚、ES細胞、TS細胞、胎盤から単離した栄養膜細胞のRNA-seqデータの解析から、栄養膜細胞で特異的に発現する転写因子を約30種類同定した。ヒトTS細胞におけるノックダウンおよび強制発現を行ったところ、3種類の転写因子がヒトTS細胞の未分化維持に重要である可能性が示唆された。 ③ヒトTS細胞の増殖制御におけるCDKN1Cの機能解析:CDKN1Cは母性発現を示すインプリント遺伝子であり、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤をコードする。CDKN1Cの発現は多くの臓器で低レベルであるが、胎盤では非常に高いことが知られていた。ヒトTS細胞におけるCDKN1Cの発現を免疫染色及びリアルタイムPCRによって解析したところ、CDKN1Cの発現量は細胞密度依存的に上昇することを見出した。さらに、CDKN1CのノックアウトTS細胞が接触阻害に対して抵抗性を示すことを明らかにした(Takahashi et al., PNAS 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトTS細胞におけるゲノム編集法を確立し、ヒトTS細胞におけるCDKN1Cの機能を明らかにすることに成功した。また、ヒトTS細胞の未分化維持に関与する転写因子の探索も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトTS細胞の未分化維持に重要である可能性が示唆された3種類の転写因子について、ノックアウトTS細胞を作製する。また、栄養膜系列で特異的に発現する転写因子を体細胞やiPS細胞に導入し、人工TS細胞の作製を試みる。
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