研究課題/領域番号 |
18K09384
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
山下 哲範 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (50588522)
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研究分担者 |
北原 糺 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30343255)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 耳鳴 / 動物実験モデル / 牛車腎気丸 |
研究実績の概要 |
高齢化社会を迎えた日本において耳鳴は、多くの患者が存在する疾患であるにもかかわらず、いまだ治療法が確立できておらず、現在、新しい耳鳴治療の開発が急務になっている。耳鳴に対する新規治療法の開発において、生理学的メカニズムの解明は不可欠であるが、継続的に使用される動物実験モデルでさえ確立できていないのが現状である。これまでに、我々は耳鳴の可視化を目指し耳鳴動物実験モデルを作製してきた。 まず最初に、我々はKizawaらが2010年に報告したサリチル酸を用いた先行研究を再現することを第一としてとりくみ、これまでに既存の動物逃避実験の問題点を抽出し、実験モデルの改良を行った。 昨年度はサリチル酸耳鳴ラット58匹に対して、耳鳴治療薬として臨床上用いられる漢方薬の牛車腎気丸を用いた実験を行った。コントロール群(蒸留水投与)、牛車腎気丸0.3g/kg/日投与群、牛車腎気丸1.0g/kg/日投与群を設定し、耳鳴行動の回数を比較した。こちらも実験方法の確立や試薬の投与方法の確立に工夫を要した。牛車腎気丸1.0g/kg/日投与群はコントロール群と比較して耳鳴行動が抑制されることがわかった。 また、牛車腎気丸が聴覚路のどの部位に作用して耳鳴を抑制するのかを調べる目的で、c-fos(神経活動マーカー)を用いた免疫組織学的手法により中枢神経の神経活動を評価する実験を開始した。その結果、牛車腎気丸によりサリチル酸投与ラットの神経活動が抑制される領域がみられる結果が得られている。 今年度は実験回数を増やしていき、実験モデルの信頼性を上げていきつつ、耳鳴に有効な治療薬の検討、耳鳴の分子生理学的機序について検証していく予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存の装置の改良を重ねることで、当施設のラット用動物行動学的逃避実験装置を用いた測定方法の標準化の確立を推し進めることは可能であった。 現在サリチル酸ラットの近似耳鳴周波数と音圧レベルの検証は終了したが、漢方薬の有効性について行動実験により引き続き検証している状況である。 条件付けを行うことに想定以上に時間がかかったことが、遅延した原因の一つと考えられた。今後も症例を増やして安定した実験が行えるようにしていく。 c-fosを用いた実験ではラットの数が十分とは言えず、さらに増やして検討を進めることが必要な状況である。実験手技の取得に時間を要したことも遅延の原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き耳鳴治療薬の投与実験に関して安定して行えるように実験状況の工夫を行う。 c-fosを用いた実験を継続して行い、牛車腎気丸の作用部位の検討をすすめる。 サリチル酸耳鳴動物モデルを用いて、現在用いられている薬物療法の効果を検証する。最終的には耳鳴の末梢から中枢へ移行するメカニズムを検証することを目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度は68匹のラットに対して条件付けと測定とを行うことができ、既存の動物逃避行動実験装置の問題点を抽出することができた。今後もラットの症例数を増やすことが必要である。また、実験装置の改良や拡充も行ったが、予定よりも既存の装置での代用が可能なものが多かったことが当該助成金が生じる一因となったと考えられる。 (使用計画)次年度は昨年度よりもさらにラットの飼育にかかる費用や免疫組織学的実験にかかる経費が増加することが予想される。また、実験結果の解析のための費用が必要になると考えられる。実験結果は国内学会、国際学会で発表予定である。
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