研究課題
眼科領域の検査機器については網膜光干渉断層計(OCT)に代表されるように、生体における網脈絡膜の形態の観察を行う機器の開発と普及に関しては近年急速に進化を遂げ、実際に広く臨床応用されている。一方で、視機能に直結する他覚的な生体機能計測は、形態の観察機器と比較して、実用化が進んでない現状がある。発症前また初期段階では形態的な変化ではなく、機能的な変化が生じることが示唆され、特に循環・代謝機能に変化がある可能性が報告されている。しかしながら、特に酸素飽和度のように生理的な因子についてこれまでリアルタイムで簡便かつ無侵襲に毛細血管領域を含む網膜の詳細な酸素飽和度を観察する方法は存在しておらず、眼科診療における課題の一つとなっていた。本研究では上記の課題に対して、これまで既存の眼底カメラにより2波長の分光画像を撮像し、得られた画像データからモルフォロジーのクロージング演算や線集中度フィルタを基盤にした解析プログラムを構築し、撮像した領域において網膜内の赤血球を測定の標的とすることで、網膜の大血管の酸素飽和度だけでなくこれまで測定が困難とされた網膜微小循環領域の酸素飽和度に代替可能なOxygen Density Ratio (ODR)の計測と可視化(マッピング)が可能なプログラムを構築した。現在、前年に引き続き倫理委員会承認後に同プログラムを用いた臨床研究を継続しており、疾患眼に対しても測定・解析を行うことで機器の有用性を検討している。
3: やや遅れている
前年までに確立したプログラムを基盤として、糖尿病網膜症や閉塞性肺疾患など網膜における酸素飽和度の低下すると考えられる疾患群からの眼底写真データ取得を行った。さらに、プログラムの精度向上のため、健常被験者に対して行った高濃度酸素負荷などのデータをもとに網膜酸素飽和度網膜微小循環領域における通常呼吸時とのODRに比較検証を行っているが、現状で仮定との整合性が完全に得られていない点と、測定領域が多く適切なダウンサンプリングの条件が決定できていない。
さらに再現性や短時間で高度な計算処理が可能な解析プログラムの改良や機器改良・更新を併行して行う事で、ヒトでのPOCの確立を目指す
研究計画にやや遅延を生じているため。使用計画としては、修正が必要な新たな解析プログラム構築の費用に充当させ開発を促進する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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