研究課題/領域番号 |
18K09515
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
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研究分担者 |
出野 尚 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40435699)
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
中島 和久 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90252692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 骨格組織 / 遺伝子発現 / タンパク発現 |
研究実績の概要 |
個体での骨や歯の原基発生は細胞凝集(Cell condensation)の形成から始まる。In vitroにおいても様々な組織の分化誘導に3次元的な凝集塊形成が極めて有効であることが知られているが、細胞凝集で分化が開始する分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究では多分化能を持つ間葉系細胞株C1を用い、細胞凝集形成を経て特異的な細胞系譜へ分化する過程において、高解像度イメージングによって一細胞レベルの解像度での解析を行う。今年度は、3D sphere、monolayer、cell aggregate を含む monolayer の3つのアプローチで解析を行った。3D sphereにおいてはまだ骨に分化させていない状態でも、G1期早期の細胞(mVenus陽性)にrunx2の発現が見られることを確認した。別の分化特異的転写因子Osx, Sox9については、必ずしもmVenus陽性に重ならず、むしろその周囲にみられた。一方、monolayerで分化が十分に始まっていない段階では、runx2とSox9の共陽性細胞が見られるが、それはmVenus陽性細胞の近傍ではあるが、mVenus陽性にはなっていなかった。一方、cell aggregate を含む monolayerでは、monolayer で低い発現がcell aggregate へ向かって移行的に発現が上昇し、しかもcell aggregate状態では非常に高い発現であることをin situ hybridizationにて観察した。これらの結果は、細胞周期特異的な細胞状態であることが一義的に発現を上昇させているわけではなく、分化形質の発現には細胞密度の高い状態が必要であることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では組織の分化誘導に3次元的な凝集塊形成が重要である、という現象を分子メカニズムの観点から明らかにすることを目的とし、まずは分化誘導に特定の細胞周期が関与するかという点に焦点を当てた。当初の計画のアプローチである3次元的な凝集塊に加え、2次元のmonolayer、さらに2次元のmonolayerに細胞がpile upしたcell aggregateを形成する培養方法、の3つのアプローチで解析を行った。それぞれで特定の細胞周期の細胞が見られるが、それらと分化形質の発現を解析することで、分化のスイッチへの細胞周期の影響を発現レベルで調べることができた。しかも複数の分化形質についても同様にみられた。したがって、研究計画書に従った実験をさらに発展させて行った結果、新しい知見が蓄積しつつあり、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれらの結果をさらに発展させ、2つのアプローチでさらなる解析を行いたい。まず、今年度は抗体を用いたタンパクレベルでの発現解析が大部分であり、転写レベルの発現は十分に行ってはいない。in situ hybridizationを中心に、少数細胞レベルでの転写解析を行い、転写物-タンパク質発現と細胞周期の関係を明らかにする。もう一つは、細胞凝集状態に必要と思われる分子間相互作用を追求する実験を開始する予定である。そのための候補として当初の予定に挙げてある、細胞間情報伝達に必要なNotch-Deltaシグナルと3次元的組織形成に必要なHippo-Yapシグナル分子を調節することで、分化形質の発現に影響するかいなかを解析する。このことで間葉系細胞分化開始に関わる細胞間相互作用の候補を絞り込みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表を発表するための国際学会などさらに複数予定していたが、出席をとりやめた学会があり、それを次年度の学会に参加することに変更した。また今年度は予定より使う抗体・試薬が少なかったが、次年度よりさらに抗体・試薬の種類を増やす必要が生じた。すなわち抗体・試薬購入、学会出席費用などに使用する予定である。
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