研究課題/領域番号 |
18K09799
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
菅原 圭亮 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (10506926)
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研究分担者 |
片倉 朗 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10233743)
折茂 彰 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (70275866)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / PDXマウス / 舌癌 |
研究実績の概要 |
口腔癌治療における外科療法は、術後の食事摂取や会話を困難にし、患者のQOLを著しく低下させる。また化学療法・放射線療法の効果も現行の治療では非常に限られており、根治的治療の開発が望まれる。舌癌は口腔がんの中で最も多く、舌は口腔機能を多くを司るため舌癌悪性化の原因を解明することが望まれる。今後の新規治療開発に役立てるために、患者舌癌手術検体を用いたpatient-derived tumor xenograft (PDX)モデルを樹立することを目的に研究を行ってきた。また、舌癌間質に多く存在する癌内線維芽細胞 (CAFs)は癌細胞の浸潤、転移の促進や治療抵抗性獲得に関与しているが、その 分子機構はまだ不明な点が多いことにも注目した。 PDXモデルの樹立および癌患者よりのCAFsの抽出を行い、CAFsがヒト乳癌や大腸癌細胞の増殖 、浸潤や転移を促進する事を明らかにした実績がある。申請研究では、患者舌癌由来CAFsを抽出し、舌癌との共移植系PDXモデルを確立する。さらにCAFsが口腔癌の浸潤、転移や薬剤抵抗性に与える影響を解明し、CAFsと舌癌の相互作用を媒介する遺伝子やシグナルを同定し、新規治療法の基礎を確立する。 舌癌PDXモデルの樹立については舌への同所移植を容易にするために患者癌塊をNOGマウスの皮下に移植することを試み、患者舌癌切除検体をマトリゲルとともにNOGマウスの皮下に移植した。同検体より同時にCAFsをprimary cultureした。半年後に皮下で増殖した癌をCollagenaseで消化しsingle cell suspensionを作製し、新たなNOGマウス舌部にCAFsあるいは対象線維芽細胞とともに移植する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私たちのグループでは大腸がんのPDX モデルの確立に成功し、またすい臓がん検体でも施行し6 例中1例で腫瘍の増大を認めている。がん組織の確保ができ次第、すでに多臓器がんで成功している条件下でマウスへの移植実験および線維芽細胞の抽出を行う。また、癌organoids樹立およびCAFsに関する研究も進行している。 患者舌癌塊をNOGマウスの皮下に大腸がんモデルの条件に沿って移植した。具体的には患者舌癌切除検体 (直径7 mm程度)をマトリゲル(Falcon)とともにNOGマウスの皮下に移植した。
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今後の研究の推進方策 |
患者舌癌切除検体を継続して収集していく。病理診断に影響が出ない大きさの癌塊が必要なので原発巣の大きな症例を選択する。 CAFsによる舌癌浸潤・転移促進や治療抵抗性に関するメカニズムの調査:DNAマイクロアレイ解析にて同定された上位5 つの遺伝子の発現をshRNAを用いて抑制する。また、ZEB1およびE-cadherinに対するshRNAを導入した口腔癌PDX由来organoidを 作成し、NOGマウスに移植後、転移の有無を観察する。 EMT誘導転写因子であるZEB1の発現が癌細胞の原発巣よりの局所浸潤や遠隔臓器に播種した癌細胞のtumor initiating ability を維持することに重要であることを推測している。E-cadheri nの発現も遠隔臓器に播種した癌細胞のcolonizationに必須であることを予期している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次の舌がん組織の確保ができ次第、すでに大腸がん・すい臓がんで成功している条件下でマウスへの移植実験および線維芽細胞の抽出を行う。
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