研究課題/領域番号 |
18K09827
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 智広 東北大学, 大学病院, 講師 (70362994)
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研究分担者 |
山本 照子 東北大学, 歯学研究科, 名誉教授 (00127250)
北浦 英樹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (60295087)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯の移動 / Runx2 / 機械的刺激 |
研究実績の概要 |
鎖骨頭蓋異形成症は、Runx2遺伝子変異を原因とした遺伝性疾患であり、歯の移動遅延が認められることから矯正歯科治療が非常に困難であるが適切な治療法は確立されていない。歯に矯正力を負荷すると、歯槽骨内の骨細胞が機械的刺激を感知し、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が生じ、歯の移動が開始される。Runx2は、骨形成に必須の転写因子であり、機械的刺激応答機構にも関与していることが示唆されているが、鎖骨頭蓋異形成症の分子レベルでの歯の移動遅延の原因は未だ解明されていない。本研究では、鎖骨頭蓋異形成症における歯の移動時の骨組織に生じる機械的刺激応答機構を解明することを目的に、同症の病態モデルであるRunx2ヘテロ欠損マウスを用いて実験的歯の移動ならびに初代培養細胞を使用したin vivo, in vitroでの分子メカニズムの解析を行う。本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスの上顎切歯に、直径0.012インチのニッケル・チタン製ワイヤーを装着し、10gの荷重で上顎右側第一臼歯を口蓋側へ移動させた。実験的歯の移動開始から0,3,7,10,14,21日後に野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスにおける歯の移動量を計測するとともに、上顎骨を摘出後、水平断連続切片を作成した。その結果、歯の移動距離は、両群ともに3,7日で増加したが、両群間に有意差は認められなかった。しかしながら、Runx2ヘテロ欠損マウスは野生型マウスに比べ、歯の移動開始10から21日後に減少し、歯の移動が遅延していた。また、実験的歯の移動時の圧迫側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群で野生型マウスに比べてTRAP陽性破骨細胞数が減少し、牽引側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群において類骨の低形成が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルを確立し、経時的な実験的歯の移動量を測定することができた。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから実験的歯の移動後の上顎骨の組織切片を作成し、実験的歯の移動時の圧迫側、牽引側の組織学的解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルから得られた上顎骨組織切片を用い、両群における歯の移動時の骨リモデリング様相をより詳細に検討する。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから初代培養細胞を単離し、細胞の増殖・分化に対する機械的刺激応答性の違いをin vitroにて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いたin vivoでの実験を中心に計画し、実験的歯の移動モデルの作成、組織学的解析を行うことができたが、免疫組織学的解析やin vitroでの初代培養細胞の単離を行うことができなかった。 次年度以降に、本年度に得られた組織切片を用いた免疫組織学的検索や野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから初代培養細胞を単離し、in vitroの系を用いた実験を行う。
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