研究課題/領域番号 |
18K09893
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
町田 麗子 (榎本麗子) 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (00409228)
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研究分担者 |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
田村 文誉 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60297017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 摂食嚥下リハビリテーション / 小児在宅歯科医療 / 遠隔診療 / オンライン診療 / 医療的ケア児 / 嚥下障害 / 小児在宅医療 |
研究実績の概要 |
在宅療養児の口腔健康管理システムを構築するためのオンラインを併用した口腔管理システムを構築することを目的とした、介入調査を含めた4年間の研究計画である。 初年度はオンラインシステムの検討と対象者の選定、対象者の口腔内環境や摂食機能評価とオンラインを併用した患者の保護者106名を対象としてアンケートを行った。72.6%が自宅と外来では患児の食べ方などの摂食状況が異なると答え、普段の状況が確認できることがオンラインに対する期待として挙げられた。 2年目~3年目では摂食機能療法におけるオンライン診療併用の効果検証を行った。オンライン群37名と対面群337名の摂食機能療法の効果を検討した調査において、両群ともに、初回評価日に比べて最終評価日では摂食機能発達段階が有意に向上していた。また、オンラインを併用した在宅での摂食機能療法を行った小児患者21名に対して行った調査では、人工呼吸器使用,経口摂取の有無,オンライン開始までの期間,他職種同席の4項目について主治医側が感じるオンライン指導の阻害要因の有無において有意差を認めなかったことから、これらの条件がオンラインを併用した摂食機能療法の阻害要因とならないことが推察された. さらに3年目~4年目では、摂食機能療法を行う小児在宅歯科医療受診患者36名(継続群16名、中断群20名)について、受診中断に影響を与える因子とその影響について2年間の経過を検討中である。また、最終年度となる5年目では摂食支援地域連携プログラムの効果検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は在宅で高度医療を受給している小児患者に対してオンラインを導入した口腔管理システムの構築を目的としている。そこで、初年度には遠隔診療システム(以下オンライン)のトライアルと最終検討、対象者選定を行う。また、遠隔診療システムを実施した患者、及び実施していない患者に対してアンケートを行った。さらに2年目、3年目には対象者を選定し継続的な遠隔診療を実施した。在宅療養児に対するオンラインの阻害要因の検討と、摂食機能療法をおこなった患者調査から対面群とオンライン群の摂食機能発達段階獲得について検討を行った。さらに、多くの在宅療養児の摂食機能療法は長期の取り組みが必要となるが、体調不良などから中断となることも散見される。そこで3年目と4年目の2年間に在宅歯科医療として摂食指導を受けた36名(継続群16名、中断群20名)の経過から、受診中断に影響を与える因子とその影響について現在アンケートにて検討中である。継続群の期間中の診療回数は7~17回であり、期間中平均診療回数は11.9回、一方、中断群の期間中の診療回数は0~11回であり、期間中平均診療回数は2.6回であった。中断群の中断理由は、3名の死亡、1名の体調不良以外は不明であった。現在、中断の要因について検討中である。 今後、診療再開者に対する再開時の摂食嚥下機能評価を検討することで、診療中断が摂食嚥下機能獲得に与えた影響について調査し、さらに中断後の他の医療機関も含めた診療継続が可能なシステムについても検討することを本研究の方法に加え、1年研究計画を延長している。また、最終年度となる5年目ではそれまでのデータについてまとめ、報告書を作製する。また、これまでの研究で得られた成果について報告、論文発表を行うことにより、小児在宅療養患者に対する遠隔診療を導入した訪問摂食嚥下リハビリテーションシステムについて、情報を発信したいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
近年の医療的ケア児の増加が社会問題となる中で、限られた人的資源を有効に活用する一手段として、在宅で高度医療を受給している小児患者に対してオンラインを導入した口腔管理システムの構築をするため本研究を計画した。しかし、研究開始後に新型コロナウィルス感染症の感染拡大が問題となり、オンライン診療の担う意義は受診の機会を増やすというだけでなく、感染予防の一面から広く認知され、一般的な医療の場でも導入されるという社会的な変化があった。そこで、オンラインを併用した持続可能な診療システムの構築を目的として、診療中断者に対する検討を加えることとした。 本研究ではこれまでオンラインを併用した在宅における摂食嚥下リハビリテーションの効果が対面と同様に有用であるという結果が得られている。これに加え、診療中断の要因分析についてアンケートとテキストマイニングを実施、またその影響について口腔機能評価を検討中である。 今後、これらの結果を踏まえ、小児在宅療養患者に対する遠隔診療を導入した訪問摂食嚥下リハビリテーションシステムの構築を図る方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、医療連携システム構築として予定していた研修会開催を延期としたこと。また、社会全体の感染予防意識の高まりから、オンライン診療に対する患者側の意識が大きく変化し、研究計画の一部を変更とした研究の延長を計画したこと。さらには学会へのオンライン参加へ変更になったために、次年度使用額が生じている。そこで次年度は、診療中断の要因分析についてのアンケートと中断者の口腔機能評価、さらには成果報告を関連学会への論文発表を行うための使用を予定している。
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