研究課題/領域番号 |
18K09902
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 貴惠 北海道大学, 大学病院, 助教 (00455677)
|
研究分担者 |
奥舎 有加 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50762027)
後藤 秀樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (70759290)
山崎 裕 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90250464)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 造血幹細胞移植 / 味覚障害 / LTFU |
研究実績の概要 |
造血幹細胞移植時の味覚障害の出現には、患者のQOL低下につながる。そのため、味覚障害の予防法の確立は重要な課題である。多剤を併用する造血幹細胞移植での味覚障害に関しての研究はいまだ少なく、そのメカニズム解明ならびに味覚障害に対する予防法の開発は急務である。 本研究の目的は、造血幹細胞移植時に出現する味覚障害が、①造血幹細胞移植時の治療による精神的・身体的ストレスを受けることによるものか、②多剤併用する抗がん剤誘発がうま味受容体との関与を解明すること、その予防法を検討し、臨床の場へ還元することである。 対象は、北海道大学病院血液内科で2015年7月から2018年8月までに造血幹細胞移植を施行した患者110名で、移植後1か月88名、3か月63名、6か月42名、12か月26名の経過観察を行った患者とした。患者背景は、平均年齢は48.8±13.3歳、男性71名、女性39名であった。移植ソースは骨髄移植11名、臍帯血移植19名、末梢血幹細胞移植80名であった。原疾患は、急性白血病または骨髄異形成症候群(AML/MDS)65名、急性リンパ性白血病(ALL)22名、非ホジキンリンパ腫(NHL)10名、慢性骨髄白血病(CML)4名、その他9名であった。 全口腔法を用いて基本味質4味の移植前、移植後1か月、3か月、6か月、12か月の認知閾値を経時的に測定した。甘味:移植前の味覚異常有群は43%、移植後1か月で57%と一時増加したが、3か月以降は約50%で推移した。塩味:移植前の味覚異常有群は63%で移植後の経過とともに徐々に増大し12か月後には81%になった。酸味:移植前の味覚異常有群は62%でその後6か月までは減少したが、12か月では54%と増加した。苦味:移植前の味覚異常有群は51%で移植後1か月に増加したが、3~6か月で低下傾向を示したが、12か月後には58%と移植前より増加した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全口腔法による味覚検査は順調に進んでいるが、予定している血清中唾液中のストレスマーカーの測定、血液中・唾液中薬物濃度の測定まではまだ施行出来ていないのが現状である。 造血幹細胞移植を施行した患者の唾液採取は、薬物による唾液腺の障害により思った以上に乾燥しており、測定出来る唾液量の採取が困難である患者が多くいることが判明したためである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き患者に協力を依頼し臨床での味覚障害の経時的評価を行うとともに、造血幹細胞移植患者を想定した動物実験を行う準備をしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
唾液ストレスマーカーの測定を施行する予定であったが、口腔乾燥により唾液採取が困難であったため測定までは保留中である。ストレスマーカー測定のためのキットを購入予定であったが、実行できていないため残金が生じている。今後は唾液ストレスマーカーの測定をELISA KITから変更し、COCOROメーターなどの機器を使用し測定していくことも検討する。
|