研究実績の概要 |
最終年度となる2021年度には、研究期間全体を通じて実施した研究の成果について発表することに努めた。 具体的な内容として、「肩こり」や「腰痛」などでPresenteeism(欠勤には至っていないが、労働遂行能力が低下している状態)と自覚しているオフィスワーカーに、鍼治療に要した費用に対して4週間に合計8,000円まで助成(キャッシュバック)すると提示すると、1回受療して症状が1/4程度改善し、7,000円の助成を受け、企業が被る損失を一人当たり14,117円補填できる可能性を示した(Industrial Health誌に掲載確定)。 Presenteeismによって企業が被っている損失は、生活習慣病などに要する医療費や欠勤による損失をはるかに上回るため、その対策を示すことは企業経営としても、労働衛生としても、極めて意義深い。しかし、その有効性を示すエビデンスは全く示されていなかったため、介入効果をランダム化比較試験で検証し、費用便益分析まで行った本研究の重要性は極めて高いと考える。また、波及効果を見込んで、(公社)東京都鍼灸師会協力を得て、実践的な多施設共同研究としたことから、テレワーク(在宅勤務)を導入している企業や、事業所が点在している企業においても平等性や公平性の高い対策になり得ると考える。 以上に加え、最も多い「肩こり」を主訴として鍼治療を受けたオフィスワーカーの「満足度」が高かった因子を検討して、「信頼度が高い」、「4,750円よりも高い価値と感じた」、「丁寧な接遇」、「高い治療技術だと感じた」が抽出されたことを全日鍼灸会誌にて発表した。また、企業の経営者にアンケートを実施し、従業員の健康管理に「鍼治療」を導入したいという企業は44%で、導入したいか否かに有意に影響する変数として「鍼治療への期待感」のみが抽出されたことを日職災医会誌に掲載されることが確定した。
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