研究課題/領域番号 |
18K09983
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井澤 美苗 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 研究員 (10338006)
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研究分担者 |
青森 達 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (40620802)
望月 眞弓 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 特任教授 (60292679)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラセボ効果 / COMT / 5HTT / パーソナリティ |
研究実績の概要 |
プラセボ効果は薬の効果に対する期待と過去に薬が効いたという条件付けが働くことに基づく効果であり、脳の認知機能を司る部位に関連がある。Near Infrared Spectroscopy(近赤外分光法・NIRS)を利用して非侵襲的に脳血流量の変化量を測定し、脳前頭前野の認知を司る部位に相当する部位の活性度を知ることができる。 また、脳内化学伝達物質の遺伝子多型で分けられたプラセボレスポンダー・ノンレスポンダーの存在がプラセボ効果を変化させる。近年では、Catechol-O-methyltransferase(COMT)、5-hydroxytryptamine transporter(5-HTT)などの遺伝子多型が、プラセボ効果の個体間を変動する要因として注目されている。 本研究は、健康成人120名に対し単盲検試験を行った。全被験者はカフェインの眠気防止作用の説明を口頭で受け、プラセボ(乳糖)を服用した。主要評価項目としては主観的指標としてStanford Sleepiness Scale(SSS)とVisual Analog Scale(VAS)、客観的指標としてNIRSによる脳血流量の変化量を測定した。プラセボ投与前後でSSSとVASともに眠気が有意に改善され(p<0.001)、プラセボ効果が確認できた。NIRSでは脳前頭前野の認知を司る部位に相当する血流量の増加傾向がみられた。COMT遺伝子は、val/val型が63名、val/met型が45名、met/met型が12名であった。SSSとVASではval/met群でNIRSでは脳前頭前野の認知を司る左位の血流量はval/val<val/met<met/metとなり、met/met群で脳活性度の高い傾向がみられた。引き続き、5-HTTの遺伝子多型の測定を実施し、プラセボ効果との関連性を検討する。またモーズレイ性格検査も実施し、パーソナリティの側面から、プラセボ効果の現れやすさを検討する。本研究は、第22回日本医薬品情報学会・学術大会(2019年6月札幌)にて成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで120例の臨床試験を終了した。目標数は115-270例であり、最少目標数は達成できた。現在はデータ解析、5-hydroxitryptamine transporter ( 5-HTT )遺伝子多型診断を行っている。遺伝子多型には欧米人と日本人において人種差があることが 知られており、日本人における検討が必要である。5-HTTの遺伝子多型ではLL型が、Catechol-O-methyltransferase ( COMT )の遺伝子多型ではMet/Met型が、プラセボ効果が高いという報告があるが、日本人には極端に少ない。COMT遺伝子多型についてはmet/met型が12名であり、概ね目標数を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、5-hydroxitryptamine transporter ( 5-HTT )遺伝子多型診断を終了させる。日本人では少ない(4-7%)LL 型の必要数を達成させることができれば、研究全体を総括的に解析・考察する。もし極端に少ないようであれば追加の臨床試験を行う。目標数の上限を270例としているので、倫理委員会の継続審査を受ければ実施できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度までに5-HTT遺伝子多型実験は条件設定を確立できたが、120名分の診断を行うことができなかった。5-HTT遺伝子多型診断には、アクリルアミドゲルによる電気泳動を行うが、電気泳動装置や試薬などの費用が必要である。また120例を総合的に解析・考察した結果、臨床試験を続行するとなった場合はその費用に当てる。
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