研究課題/領域番号 |
18K09992
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川崎 唯史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90814731)
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研究分担者 |
松井 健志 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究支援センター, 部長 (60431764)
大北 全俊 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70437325)
佐藤 靜 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (80758574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脆弱性 / 研究倫理 / 弱者 / 医学研究 / 被験者保護 |
研究実績の概要 |
まず、昨年度に本研究班全員で執筆し、生命倫理学会の学会誌『生命倫理』に投稿した、研究倫理における脆弱性概念に関する論争を整理した総説的な論文が報告論文として受理され、掲載された。また、当該論文によって研究代表者が同学会の若手論文奨励賞を受賞したため、第32回日本生命倫理学会年次大会にて受賞講演を行った。講演後の質疑を通じて今後の課題がより明確化された。その後、同学会の研究倫理部会の第5回定例研究会において研究代表者が「研究倫理における脆弱性に関する議論の紹介」と題した発表を行い、上述の論文では扱えていなかった2019年の先行研究を検討するとともに、研究倫理における脆弱性に関してより積極的な主張を行う論文をどのように構成すべきかについて、国内の研究倫理学者と議論した。 研究分担者の佐藤は、新潟水俣病事件における妊娠規制に関して、弱い立場に置かれた女性が規制によって受けた被害について、脆弱性とも深く関連する優生思想とフェミニスト倫理学の観点から検討した論文を『医学哲学・医学倫理』誌にて発表した。 研究分担者の大北は、『現代思想』誌掲載のHPVワクチンに関する日本の予防接種行政を論じた論文において、接種の責任が行政から保護者・本人へと個人化された経緯を踏まえ、ワクチン接種を推奨する立場から政府ではなくワクチンの副反応被害を訴える個々人が責任を追及される事態が生じる可能性を指摘し、リスク・マネジメントの個人化が弱い立場に置かれた者に何をもたらすかを考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究の調査はおおむね完了し、諸外国および国際的な研究倫理ガイドラインの検討もある程度まで行ったが、本研究の最終的な目標である、日本の研究者、研究倫理関係者向けに社会的な立場の弱い研究参加者への倫理的配慮に関する原則および具体的適用の考え方を示す文書の作成には至らなかった。新型コロナウイルス感染症への各自の対応に加え、研究代表者が子の出生に伴って約二ヵ月間研究に従事できなかったことが主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
社会的な立場の弱い研究参加者への倫理的配慮に関する原則および具体的適用の考え方を示す文書の作成を目標に、オンラインでの科研研究会を通して共同研究を進める。また、フェミニスト倫理学における脆弱性論の検討、HIV/AIDS等の関連する医学研究の歴史の調査も継続し、上記の文書の理論的・歴史的裏づけを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症への各自の対応に加え、研究代表者が子の出生に伴って約二ヵ月間研究に従事できなかったことを主な理由として、本研究の最終的な目標である、日本の研究者、研究倫理関係者向けに社会的な立場の弱い研究参加者への倫理的配慮に関する原則および具体的適用の考え方を示す文書の作成に至らなかったので、研究期間を1年延長することになったため。
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