研究課題/領域番号 |
18K10632
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
福本 久美子 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (40465787)
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研究分担者 |
茶屋道 拓哉 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 准教授 (10412785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熊本地震 / ソーシャルキャピタル / 健康 / 地域 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
①研究目的:熊本地震後の高齢者の健康とソーシャルキャピタル(以下[SC])の醸成のあり方を地域看護と社会福祉の立場から分析し提言する。初年度は、聞き取り調査等から、熊本地震前後の個人や地域のSCの実態と課題を把握することである。 ②研究方法:研究全期間の構成は第一調査と第二調査とし、初年度の第一調査は被災地住民を対象とした半構成面接法による質的調査である。対象住民は、震源地自治体である熊本県上益城郡益城町のA地区高齢者(以下[A])とB地区の小学生を持つ保護者(以下[B])。調査内容は、熊本地震の被災状況や前後の健康とSC等。分析方法はインタビュー内で出された発言を関係者で帰納法的分析を行う。倫理的配慮は本学倫理委員会の承認を得た。 ③研究結果と考察:Aは65歳以上高齢者12人、Bは5人(40代)、A・B外の仮設住宅居住高齢者。Aは居住年数20年以上、自宅被災状況は半壊以上11人。Bは居住年数約10年、自宅半壊以上1人。Aは、地震前から[地域消防団]や地域内神社の祭り等を中心の地縁関係に基づく強いSCが存在。地震後、そのSCにより復旧復興。さらに、地震により地域外から多くの支援を得、地域外との交流が生まれ開かれたSCとなっている。高齢者中心の[絆の会]や神社復興等によりSCを醸成している。Bは子供を通じたSCとSNSによる情報交換が存在した。地震の被害状況に差があり、日々の生活に追われ互いの気持ちを吐き出す場がなく複雑な感情を語った。地域内の子供を中心としたイベントがなくなった地域もあった。第3者による語りの場の大切さを話していた。仮設住宅居住者は現時点(約3年経過)で仮設住宅高齢者の実態と退去後の孤立等について言及した。これまでの調査より、被災状況の差や地域のSCのありよう、地域のシンボル(神社等)、災害発生による外部支援は復旧・復興過程に影響を及ぼしていることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①熊本地震の復旧・復興過程における調査のため、インタビュー対象地域との最終調整に時間を要し、インタビュー調査が遅れたこと。 ②研究検討会の中で、新たな聞き取り項目が確認され、更なる調査が必要になったこと。
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今後の研究の推進方策 |
①関係者による分析検討会で出された新たな疑問点について、再インタビューを実施し、その内容も含め再検討を行うこと。 ②過去に発生した災害後の復旧復興過程の調査を行い、今後の調査内容に関する検討を行うこと。
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次年度使用額が生じた理由 |
①熊本地震の復興過程における調査のため、調査対象地域との調整が難航し、調査地域と対象者数が予定より少なかったことや、結果に関する関係者検討会を年度内に開催できず、本年度当初になったため、前年度未使用額が発生した。 ②本年度使用計画は、本年5月開催の検討会(昨年度実施予定分)の費用、及び、その会で出された再調査項目に関する調査や調査地域の追加提案などがあり、調査地域の拡大と再調査費用、研究検討会の開催費用に充てることとしている。
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