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2020 年度 実施状況報告書

EDHFによる内膜肥厚の制御に関する探索研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K10795
研究機関日本福祉大学

研究代表者

伊藤 猛雄  日本福祉大学, 健康科学部, 教授 (70159888)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード内皮依存性膜過分極因子 / 動脈グラフト / 内膜肥厚 / 血管内皮機能障害 / 一酸化窒素 / Ca活性化K+チャネル
研究実績の概要

動脈における血流と内膜肥厚の関係を検討するため,自家動脈グラフトのウサギ総頚動脈グラフトモデルを作成した(Tabata K et al., 2017).血流低下(poor-runoff)群は3本の右外頸動脈の分枝のうち2本を結紮することにより作成した.術後4週間経過した動物で,平均血圧,心拍数と左総頚動脈の血流は2群間(無結紮群とpoor-runoff群)で差がなかった.右総頚動脈の血流は,無結紮群>poor-runoff群(無結紮群の約13%)であった.
パラフィン固定したグラフト血管内腔の直径は無結紮群>poor-runoff群で,動脈壁の中膜と内膜の厚さは無結紮群=poor-runoff群であった.以上の結果より,本動物モデルの動脈グラフトの約87%血流低下は,血管内腔径を減少させるが血管壁の厚さには影響しないことが分かった.これらの結果は,静脈グラフトの場合と著しく異なっている(Kodama et al., 2009など).
内皮細胞は,内皮由来弛緩因子(一酸化窒素,EDNO)に加え,内皮由来膜過分極因子(EDHF)を遊離することにより内膜肥厚を抑制する.グラフトの内皮依存性弛緩反応を指標として,動脈グラフトでの血流低下とEDNOやEDHFの機能変化の関係を検討し,無結紮群と比較して,poor-runoff群におけるEDNOとEDHFの弛緩反応はそれぞれ約25%および約50%減少した.
内皮細胞の過分極がGAP Junctionを介して平滑筋細胞を過分極させ,血管を弛緩させることがEDHFの本体であるとの説がある.本年度は,無結紮群とpoor-runoff群における動脈平滑筋細胞の静止膜電位と内皮細胞刺激物質による内皮依存性過分極反応の変化に関する研究を中心に検討を行う.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動脈グラフトにおける異常血流とEDNOやEDHFの機能変化の関係について,ウサギ自家総頸動脈グラフトモデルを使用して検討した.これまでの研究によって,(1)動脈グラフトにおける約87%の血流低下は血管壁を肥厚させないこと,(2)poor-runoff群の動脈グラフトでは,EDNO依存性とEDHF依存性の弛緩反応がともに比較的マイルドに減少した(言い換えると,著しく血流が減少した条件下でもEDNOによる弛緩反応は75%が,EDHFによる弛緩反応は50%が保持された).これらの結果は,以前我々が報告したウサギ自家静脈グラフトの場合と異なっている(つまり,poor-runoff静脈グラフトでは,EDNOおよびEDHFの機能がほぼ完全に消失していた:Kodama et al., 2009; Maekawa et al., 2012; Koyama et al., 2016).これらの結果は,静脈グラフトとは異なり,動脈グラフトでは著しく血流が減少した条件下において何らかの機序によりEDNOとEDHFの機能を保持させている可能性を示唆する.現在この機構の詳細は不明である.
EDHFの本体として,内皮細胞の過分極がGAP Junctionを介した電気的カップリングにより平滑筋細胞を過分極させ血管を弛緩させる機構の関与が考えられている.現在,無結紮群とpoor-runoff群の動脈グラフトでおける平滑筋細胞の静止膜電位および内皮細胞受容体アゴニストであるアセチルコリンとサブスタンス-Pおよび内皮細胞非受容体刺激薬であるCaイオノフォアのA23187による内皮依存性過分極の変化について研究を行っている.

今後の研究の推進方策

本年度までの研究結果を確認するための追加実験を行うとともに,正常血流およびpoor-runoff下の動脈グラフトを用いて,血流変化に伴う動脈グラフの平滑筋細胞の静止膜電位変化を検討する.さらに,血流変化に伴う動脈グラフトにおけるEDHFの機能変化を明らかにするため,内皮細胞受容体アゴニストであるアセチルコリンとサブスタンス-Pおよび内皮細胞非受容体刺激薬であるCaイオノフォアのA23187による内皮細胞依存性過分極の変化を検討する.また,内皮細胞過分極反応に対するKCaチャンネル阻害薬とGAP Junction阻害薬の効果についても検討する.

次年度使用額が生じた理由

<次年度使用が生じた理由>
今年度は,コロナ禍の状況でコンスタントなウサギの入手が困難であり,十分なモデル動物作成が出来なかった.そのため,正常およびpoor-runoff条件下の動脈グラフトの機械的反応を利用したEDNOとEDHF機能変化に関する研究に十分な時間と経費を割くことが出来なかったため.
<使用計画>
動脈グラフトの機械的反応を利用したEDNOとEDHFの機能変化に関する実験の追加実験を行うとともに,研究計画に従い動脈グラフトでの内皮依存性膜電位変化(EDHFの機能変化)に関する電気生理実験を行う.経費は,これらの実験を遂行するための試薬やその他の消耗品の購入,および関連する学会に出席するための旅費や論文作成に使用する予定である.

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公開日: 2021-12-27  

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