研究課題/領域番号 |
18K11009
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
末永 みどり 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (00389181)
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研究分担者 |
松永 洋一 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (80239053) [辞退]
坪井 義夫 福岡大学, 医学部, 教授 (90291822)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / パーキンソン病 / 多系統萎縮症 / プリオン病 / 神経変性疾患 / ビタミンD / 脂溶性ビタミン |
研究実績の概要 |
次の2点について、研究を行った。 ①2019年度は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)及び多系統萎縮症(MSA)患者における、血清中の25(OH)ビタミンD(25(OH)VD)値及び1,25(OH)2VD値の相違について明らかにした。2020年度は、そのメカニズムを明らかにすると共に、上記疾患の早期・鑑別診断法を発展させるため、活性型VDの生合成及び代謝に関与する4種類の水酸化酵素CYP2R1、CYP27A1、CYP27B1及びCYP24A1に注目した。ELISA法により、上記疾患患者におけるこれらの酵素の血清中濃度を測定し、これらの疾患と健常人との比較を行った。25位水酸化酵素のうち、主として働くCYP2R1は、いずれも健常人と同程度であったが、CYP27A1は、PDとMSAにおいて有意に低下した。1α位水酸化酵素CYP27B1は、PD及びMSAにおいて有意に低下したが、活性型VD不活化酵素である24 位水酸化酵素CYP24A1は、いずれの疾患においても健常人と同程度であった。また、これらの酵素量とその生成・基質量には、相関は見られなかった。PDにおける25(OH)VD 量の低下及びMSAにおけるVD水酸化体量の低下は、これらの生成酵素量の低下によると推察されるが、PDにおける1,25(OH)2VD量の上昇とADにおけるVD水酸化体量の低下については、他の要因について更なる検討が必要である。 ②PD関連疾患である進行性核上性麻痺(PSP)、PD、MSA及び大脳皮質基底核変性症候群(CBS)患者について、脳MRIにより視床下核容積と大脳容積を比較したところ、大脳容積はいずれの疾患においても同程度であったが、視床下核容積はPSPにおいて他の疾患よりも有意に低下していた。この結果から、視床下核容積は、PD関連疾患におけるPSPの鑑別診断に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①活性型VDの生合成及び代謝に関与する酵素群の解析を優先させたため、当初計画していたPD、AD及びMCIの血清中ビタミンE(VE)濃度の解析を行うことができなかった。 ②疾患モデル細胞及び疾患モデル動物へビタミン投与を行う計画については、新型コロナ感染症拡大の影響により研究外の業務も時間が割かれ、充分な研究時間を確保することができなかったため、実施できていない。 ③ビタミン類による凝集性蛋白質の構造変化解析については、②と同様の理由により完了しておらず、現在進行中である。 以上のことから、当初の計画よりもやや遅れているとの評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、以下のように研究を進める。 ①AD、PD、MSA及びMCIについて、血清中のVE濃度を測定し、各疾患における相違や重症度との相関性を検討する。 ②アミロイドβ、正常プリオンタンパク質(PrPc)、α-シヌクレイン及びTDP-43との結合を示すビタミン類について、これらの凝集性タンパク質の構造及び凝集性に対する効果を検討する。特に、VD及びその代謝体について、水酸基の付加がどのような変化をもたらすのかを検討する。 ③神経由来細胞を用い、②で示す凝集性タンパク質の細胞内での凝集性の形成や細胞毒性に対する上記ビタミン類の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響により、研究外の業務に時間を割かれてしまい、充分な研究時間を確保できなかったため、物品の購入が予定より減少してしまった。また、研究補助員を雇用する予定だったが、上記の理由により雇用を控えた。これらの理由により、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、血清中ビタミンE測定キット、凝集実験に用いるリコンビナントタンパク質及び解析用試薬の購入を行う予定である。
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