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2018 年度 実施状況報告書

フィトケミカルの乳癌細胞特性に基づいた抗癌作用による乳癌発症予防と再発抑制

研究課題

研究課題/領域番号 18K11037
研究機関中村学園大学

研究代表者

中野 修治  中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (40164248)

研究分担者 竹嶋 美夏子  中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00241183)
日野 真一郎  中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00372699)
小野 美咲  中村学園大学, 栄養科学部, 講師 (10441726)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード乳がん / フィトケミカル / 抗がん作用 / 一次予防 / がん遺伝子 / アポトーシス / 細胞周期 / シグナル伝達
研究実績の概要

我々はフィトケミカルが乳癌発症リスクを低下させるという疫学研究のエビデンスを乳癌発症モデルラットで検証を行うとともに、乳癌細胞を使用して単独や併用での抗癌作用の分子メカニズムを明らかにしてきた。大豆イソフラボンの成分であるゲニステイン(GEN)、ダイゼイン、グリシテイン、及びダイゼインの腸内細菌代謝産物であるエクオールについて、乳癌細胞で活性化されているSrc癌遺伝子に対する効果を検討した。Src癌遺伝子を導入したヒト癌細胞に対してGENは強い増殖抑制能を示したが、エコール、ダイゼイン、グリシチンは殆ど抑制効果が見られず抵抗性を示した。FACS解析ではGENの増殖抑制はアポトーシス誘導ではなく細胞周期をG2/Mに停止させることが主な機序であり、分子レベルではp53とp21の発現を上昇させ、p21のリン酸化を抑制したが、他の細胞周期関連分子には影響を及ぼさなかった(日本癌学会総会2018; 欧州癌学会EACR 2018)。GENはSrcの活性化が関与している乳癌の発症に予防的役割を果たす可能性が示唆された。
ブロッコリースプラウトに豊富なスルフォラファン(SFN)はリコペンやプテロスチルベンと同様に、トリプルネガティブ(TN)乳癌由来の細胞に強い増殖抑制効果を示し、細胞周期をG1期に停止させ、分子レベルではAKT-mTORのシグナルを抑制し、Baxの発現を高めてアポトーシスを誘導した。またSFNの経口投与は、TN乳癌細胞を移植した担癌ヌードマウスでの腫瘍増殖を著明に抑制した(栄養食糧学会2018)。 このことはSFNは乳癌の中でも予後不良で治療の選択が化学療法に限定されているTN乳癌の発症のみならず治療にも応用できる可能性が示唆された。現在、有色豆に含まれているアントシアニンとプロシアニジンの抗癌効果を乳癌細胞で検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

In vitroでの種々のフィトケミカルによる乳癌細胞の増殖抑制の分子機序の研究はほぼ順調に進んでおり、とくにスルフォラファン経口投与による担癌動物での増殖抑制を見出すことができた。リコペンによる乳癌予防実験ではリコペンの血中濃度を上げるため油脂の添加を行い再実験しているため結論が出るのに時間がかかっている。また現在Src導入細胞を移植した担癌ヌードマウスでのゲニステインの抗腫瘍効果も検証中である。またアントシアニン類のデルフィニジン、マルヴィジン、ペチュニジン、シアニジンの乳癌細胞に対する抗腫瘍効果の研究にも着手しており、デルフィニジンのみが抗癌活性を有することが判明した。現在、この抗腫瘍効果の差の原因を解析中であるため、予定していた乳癌幹細胞に対するフィトケミカルの増殖抑制機序については着手できていない。

今後の研究の推進方策

乳癌細胞を使用してフィトケミカル単独でその作用機序を明らかにしてきたが、フィトケミカルは細胞内の多彩なシグナル分子に働くことがわかったので、今後は抗癌剤や分子標的製剤との併用での相乗作用とその機序を検討する予定である。また担癌ヌードマウスにおける実験ではフィトケミカル投与群での腫瘍増殖抑制効果をアポトーシス誘導から解析するため、TUNEL法による腫瘍組織でのアポトーシスの定量を行い、in vitroとin vivoの整合性を確認する。また胃癌、乳癌、肺癌、膵癌、大腸癌などで活性化している Her2、Ras、EGFRなどの癌遺伝子を導入したヒト癌細胞に対して、フィトケミカルがどのように働くかを検証する予定である。また計画通り乳癌幹細胞を使用して、フィトケミカルの感受性や抵抗性を見ることにより乳癌再発予防を示すと考えられるフィトケミカルを選択する。
以上の研究で乳癌発症リスクを低下させるという疫学研究のエビデンスの検証を行うとともに、異なる癌遺伝子に対するフィトケミカルの作用の違いを明らかにし、乳癌のみならず消化器癌や肺癌、膵癌のなどの発症や再発予防への応用の可能性を探る。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していたフィトケミカルの中でスルフォラファンの研究が進展し、分子メカニズムの解明とともに、ヒト乳癌細胞移植ヌードマウスに摂取させることで腫瘍の増殖を副作用のない濃度で抑制ができた。このため臨床応用に早期移行するため研究成果を本年度中に発表する必要があり、平成30年度の経費を増額する必要がでてきた。このため平成30年度中に計画した研究計画を遂行するため次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Relationship between plasma protein S levels and apolipoprotein C-II in Japanese middle-aged obese women and young nonobese women.2018

    • 著者名/発表者名
      Otsuka Y, Ueda M, Nakazono E, Tsuda T, Jin X, Noguchi K, Sata S, Miyazaki H, Abe S, Imai K, Iwamoto M, Masuda T, Moriguchi R, Nakano S, Tsuda H.
    • 雑誌名

      Blood Coagul Fibrinolysis

      巻: 29 ページ: 39-47

    • DOI

      10.1097/MBC.0000000000000662

    • 査読あり
  • [学会発表] 女子学生の生活習慣と睡眠の質との関連性について2019

    • 著者名/発表者名
      市川彩絵、花村衣咲、津田博子、河手久弥、阿部志麿子、今井克己、岩本昌子、増田隆、安武健一郎、小野美咲、上野宏美、梶山倫未、能口健太、川崎遥香、鬼木愛子、前田翔子、中野修治、大部正代
    • 学会等名
      第22回日本病態栄養学会年次学術集会 横浜 パシフィコ横浜
  • [学会発表] 冠動脈疾患リスクファクターとしての血清リポプロテイン(a)[Lp(a)]の検証2019

    • 著者名/発表者名
      鬼木愛子、中野修治、津田博子、河手久弥、岩本昌子、大部正代、阿部志磨子、増田隆、安武健一郎、森口里利子、宮崎瞳、上野宏美、小野美咲、梶山倫末、能口健太、甲斐田遥香、市川彩絵、大塚尚直、今井克己.
    • 学会等名
      第22回日本病態栄養学会年次学術集会 横浜
  • [学会発表] 閉経後肥満症女性患者のインスリン抵抗性に影響を及ぼす体格および体重変動様態の長期検討2019

    • 著者名/発表者名
      上野宏美、今井克己、阿部志麿子、森口里利子、岩本昌子、小野美咲、大部正代、大和孝子、竹嶋美夏子、能口健太、河手久弥、川崎遥香、安武健一郎、梶山倫実、市川彩絵、鬼木愛子、津田博子、中野修治
    • 学会等名
      第22回日本病態栄養学会年次学術集会 横浜 パシフィコ横浜
  • [学会発表] 肥満女性の減量指導後の内臓脂肪面積の変動と食行動との関連.2018

    • 著者名/発表者名
      森口里利子、阿部志磨子、今井克己、岩本昌子、大部正代、河手久弥、津田博子、安武健一郎、小野美咲、市川彩絵、鬼木愛子、梶山倫末、川崎遥香、能口健太、上野宏美、中野修治.
    • 学会等名
      第39回日本肥満学会 神戸
  • [学会発表] 閉経後肥満女性のグラフ化体重日記による2年間の起床直後の体重変動の解析.2018

    • 著者名/発表者名
      上野宏美、今井克己、阿部志麿子、森口里利子、岩本昌子、小野美咲、大部正代、大和孝子、竹嶋美夏子、脇本麗、能口健太、河手久弥、川崎遥香、安武健一郎、梶山倫末、市川彩絵、鬼木愛子、津田博子、中野修治.
    • 学会等名
      第39回日本肥満学会 神戸.
  • [学会発表] ゲニステインはSrc誘導性の増殖をp53およびp21レベルの増加を介したG2/M期での細胞周期停止により抑制する.2018

    • 著者名/発表者名
      小野美咲、中野修治.
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会 大阪.
  • [学会発表] 乳癌細胞に対するPterostilbeneの抗腫瘍効果およびResveratrolとの比較.2018

    • 著者名/発表者名
      脇本麗、竹嶋美夏子、小野美咲、中野修治.
    • 学会等名
      第65回日本栄養改善学会学術総会 新潟.
  • [学会発表] リコピンの高脂肪飼料給餌ラットにおける脂質代謝と酸化ストレスに対する効果.2018

    • 著者名/発表者名
      竹嶋美夏子、小野美咲、脇本麗、中野修治.
    • 学会等名
      第65回日本栄養改善学会学術総会 新潟.
  • [学会発表] 管理栄養士養成校でのアーリーエクスポージャー導入による教育効果.2018

    • 著者名/発表者名
      小野美咲、中野修治.
    • 学会等名
      第65回日本栄養改善学会学術総会 新潟.
  • [学会発表] Differential anti-proliferative activity of isoflavones against Src-activated human adenocarcinoma cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Misaki Ono, Takako Higuchi, Mikako Takeshima, and Shuji Nakano.
    • 学会等名
      7th Asian Congress of Dietetics (ACD) Hong Kong.
    • 国際学会
  • [学会発表] The role of weight fluctuation of fasting morning weight for 2 years in the reduction of body weight in Japanese obese women.2018

    • 著者名/発表者名
      Hiromi Ueno, Hitomi Miyazaki, Katsumi Imai, Masako Iwamoto, Masayo Obe, Hisaya Kawate, Takako Yamato, Yasutake Kenichiro, Mikako Takeshima, Ririko Moriguchi, Misaki Ono, Hiroko Tsuda, and Shuji Nakano.
    • 学会等名
      7th Asian Congress of Dietetics (ACD) Hong Kong.
    • 国際学会
  • [学会発表] Genistein, a major isoflavone component, suppresses Src-induced proliferative activity by arresting cell cycle at G2/M through increasing the p53 and p21 levels2018

    • 著者名/発表者名
      Misaki Ono, Takako Higuchi, Mikako Takeshima, Rei Wakimoto, and Shuji Nakano
    • 学会等名
      25th Biennial Congress of the European Association for Cancer Research, Amsterdam
    • 国際学会
  • [学会発表] 大豆イソフラボンと乳癌との関係.2018

    • 著者名/発表者名
      小野美咲
    • 学会等名
      第28回食品産業創造展 機能性食品特別セミナー 福岡.
  • [学会発表] 若年女性の血清尿酸値と嗜好飲料摂取の関連2018

    • 著者名/発表者名
      宮崎瞳、上野宏美、今井克己、阿部志磨子、増田隆、森口里利子、津田博子、岩本昌子、中園栄里、小野美咲、五郎丸瞭子、大部正代、能口健太、河手久弥、甲斐田遥香、安武健一郎、梶山倫末、市川彩絵、鬼木愛子、中野修治
    • 学会等名
      第72回日本栄養・食糧学会大会 岡山
  • [学会発表] プテロスチルベンのヌードマウス移植乳癌細胞の腫瘍形成に関する効果の検討2018

    • 著者名/発表者名
      脇本麗、竹嶋美夏子、小野美咲、中野修治
    • 学会等名
      第72回日本栄養・食糧学会大会 岡山
  • [学会発表] 高脂肪飼料給餌ラットにおけるリコピン高含有トマトパウダーの肥満、血清脂質、酸化ストレスに対する効果2018

    • 著者名/発表者名
      竹嶋美夏子、脇本麗、小野美咲、中野修治
    • 学会等名
      第72回日本栄養・食糧学会大会 岡山
  • [図書] ロス 医療栄養科学大事典  健康と病気のしくみがわかる (担当:共訳, 範囲:IV 部  病気の予防と治療 I その他の全身疾患 98章 鉄欠乏性貧血とまれな栄養性貧血の血液学的特徴 p1037-1046)2018

    • 著者名/発表者名
      A・キャサリン・ロス、稲垣暢也、中屋 豊 共訳, 小野美咲、中野修治
    • 総ページ数
      1368
    • 出版者
      西村書店
    • ISBN
      4890134913

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公開日: 2019-12-27  

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