昨年度に引き続き最終年度も、糖及び脂肪酸添加によるβ細胞の機能疲弊及び分化転換のin vitro培養モデルのキャラクタリゼーションを行った。1つ目として急性毒性(数日レベル)、慢性毒性(数週間レベル)の可逆性、可塑性を検証すべく、過栄養ストレス群、通常培地へのリリース群を準備し、トランスクリプトーム解析を行った。なお、培養系の不具合および、受託解析先の機器トラブルが重なり、トランスクリプトーム解析の結果が最終年度3月にまでずれ込んだため、現在詳細な結果は精査中である。2つ目として過栄養ストレスにおけるInsulin fluxを解析すべく、まずはどのタイプのInsulin分泌阻害剤が使用に適しているかを検証するためにパイロット実験を行った。その結果、少なくとも通常培養培地での培養下ではInsulin分泌抑制効果が十分ではないことが明らかとなった。
研究期間全体を通じて実施した研究成果) 研究代表者の予想通り、過栄養ストレスの急性毒性と慢性毒性では可逆性、可塑性の観点で差異があることを示唆するデータが取れ始め、研究計画の本筋の正当性は確立できたと考える。その一方で、これまで当たり前のように用いられてきた既存の培養システムや評価システム等、in vitroでのβ細胞を用いた糖尿病研究の問題点も徐々に明らかになり、研究推進においては障害となっている点は否めない。しかしながらこの問題点を一つ一つクリアにし学術界に発表しながら、正しいin vitro糖尿病研究を展開する非常に大きなチャンスであると考えている。2023年度から2026年度の予定で基盤Cに採択されたので、引き続きこの観点を軸にβ細胞の過栄養ストレス応答機構に関する研究を推進していく予定である。
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