研究課題
ミトコンドリア機能解析には、質の高い単離技術が重要である。マウス腎臓尿細管からミトコンドリアを単離する技術を確立するために、単離ミトコンドリアの酸素消費の実験系におけるrespiratory control ratio [基質+ADP存在下(state 3)における酸素消費速度と基質のみ存在下(state 4)における酸素消費の比]を指標に野生型マウスを用いて単離方法の試行錯誤を行った。その結果、respiratory control ratioの高い高品質のミトコンドリアを腎尿細管から単離する方法を確立した。糖尿病によるミトコンドリア機能の影響を検討する前に非糖尿病状態におけるTBP-2欠損がミトコンドリア機能に与える影響を検討しておくことは重要であり、野生型マウスとTBP-2欠損マウスの尿細管ミトコンドリアを単離し機能解析を実施した。基質によるATP産生実験では、呼吸鎖complex 4から電子を供与する基質においてTBP-2欠損マウスでATP 産生低下を認め、TCA サイクルにおける代謝やTCAサイクルから電子が供与される呼吸鎖上流よりもcomplex 4以降の下流の障害が示唆された。またこの条件下での内膜過分極における電位に両者で差はなく、またstate 3,state 4における酸素消費やrespiratory control ratioにも両者で有意差はなく、脱共役の影響は示唆されなかった。またウェスタンブロットにおけるcomplex 1~5、リン酸キャリアー、ATP/ADPキャリアー、チトクロームC、Uncoupling Protein 2のタンパク量にも差がなかった。呼吸鎖タンパクはsuper complexと呼ばれるタンパク複合体を形成し機能に影響することが示されており、複合体を形成したまま泳動できるBN-PAGEを用いてcomplex 1~4の複合体を検索したが差はなかった。
3: やや遅れている
今後のin vivo実験での解析進捗においても、信頼性の高い実験系の確立が重要であり、野生型マウスとTBP-2欠損マウスの尿細管ミトコンドリアの機能比較実験に専念することで、実験系の精緻化をすすめ確立できた。糖尿病モデルであるSTZマウスにおけるミトコンドリア機能の変化について解析をすすめる準備は完成したと考える。
STZマウスにおけるミトコンドリア機能の変化について機能解析を開始する。野生型マウスとTBP-2欠損マウスの尿細管ミトコンドリアの機能比較実験では、comlex 5周囲の機能異常が疑われ、BN-PAGEを用いたcomlex 5のモノマー・ダイマー・オリゴマーやATP合成酵素複合体(comlex5、リン酸キャリアー、ATP/ADPキャリアーの複合体)の解析をすすめている。
本年度は実験系確立に専念したためin vivo実験が開始されておらず残額が生じた。次年度に実施するので、次年度使用額とすることは妥当である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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