研究課題/領域番号 |
18K11129
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
藤本 新平 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00333576)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 糖尿病性腎症 / グルコース再吸収 |
研究実績の概要 |
近位尿細管上皮細胞(PTEC)は、原尿中の多数の物質の能動輸送を行っておりATP必要量が多くミトコンドリアを豊富に含みグルコース代謝制御においても重要な細胞である。糖尿病状態におけるPTECの代謝異常と尿細管障害の関連の解明を目的とする。thithioredoxin-interacting protein (TXNIP)は、代謝障害センサーとして働き、高グルコースなどで発現が誘導される蛋白で主として以下のようなグルコース代謝関連機能を有する。糖尿病状態のPTECにおいては尿糖増加に起因する尿細管側からのsodium-glucose cotransporter(SGLT)を介するグルコース・ナトリウム流入の増加がPTECに対する代謝的ストレスとなっており代謝障害センサーであるTXNIPの役割を解明する必要がある。8週齢雄のC57BL/6マウスにストレプトゾトシン(STZ )20mg/ml(0.05Mクエン酸緩衝液pH4.5)を50mg/kgで5日間連続で腹腔投与した。コントロール(CNT)にはクエン酸緩衝液のみを投与した。33日後の随時血糖はCNT群168±26(以下平均値±標準偏差)mg/dL、STZ群623±35mg/dLと有意な上昇を認めが、血中ケトン体の有意な上昇は認めなかった。また体重は、CNT群26.1±0.3g、STZ群25.4±1.3gと有意差はなかった。血圧はCNT群 103±6/44±6mmHg、STZ群 121±13/61±11mmHgと優位に上昇を認めた。尿中アルブミンはCNT群85±59mg/day、STZ群531±249mg/dayと有意に増加した。TXNIPのタンパク量を骨格筋、肝臓、腎皮質で評価した。骨格筋では有意なTXNIPの発現増加を認めたが、肝臓、腎皮質では認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回のSTZ投与法による糖尿病モデル動物作成では前回で見られた血圧低下はなくむしろやや上昇した。また前回の投与法では体重が減少したが、今回は体重減少が見られなかった。また尿中アルブミンは有意に増加した。前回の投与法では脱水になっていた可能性があったが、今回は体重、血圧とも安定しておりしかも尿中アルブミンは増加したので、糖尿病性腎症モデルとしては成功している。それでも腎皮質ではTXNIPの発現増加は認めなかった。TXNIPが腎皮質で過剰発現する条件については更なる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病モデル動物であるdb/dbマウスを用い腎皮質におけるTXNIPの過剰発現の有無を検討する。このモデルは肥満糖尿病モデルであり、TXNIPの発現には、高血糖のみではなく肥満の要素も必要かもしれないという仮説を検証する。過剰発現が見られればSGLT2阻害薬を投与し、発現の抑制が見られるか検討し、近位尿細管ミトコンドリア機能解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
腎皮質にてTXNIPが過剰発現する条件が見つからず、以後の実験が進捗していない。TXNIPの過剰発現には高血糖のみならず肥満も必要である可能性があり、肥満糖尿病モデルであるdb/dbマウスを用い更なる検討を行う。
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