研究課題/領域番号 |
18K11141
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
釘田 雅則 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究サポートセンター, 講師 (50440681)
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研究分担者 |
熊本 海生航 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究施設, 講師 (10469322)
吉村 文 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究施設, 講師 (90466483)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多発性嚢胞腎症 |
研究実績の概要 |
多発性嚢胞腎症(PKD)は、腎臓に多数の嚢胞を形成する遺伝病である。PKDは、生殖細胞由来のPKD責任遺伝子の変異に体細胞由来の変異が加わり、PKD責任遺伝子の両対立遺伝子が機能しなくなることにより病態が発症すると考えられている。本研究の目的は、体細胞変異がPKDの病態に影響するか、また、体細胞変異は食事の影響を受けるかを調べることにある。 多発性嚢胞腎を形成するモデル動物は、ほとんどが責任遺伝子の両対立遺伝子に変異を必要とする。その中で、CyラットとPkd1ノックアウト(KO)マウスは、2つある責任遺伝子のうち1つに変異が入れば嚢胞を形成し、2つに変異が入れば、変異が1つよりも病態が悪化する。1つの責任遺伝子に変異が入った場合、Cyラット(Anks6+/-)は4週齢から嚢胞形成が見られるのに対し、Pkd1 KOマウス(Pkd1+/-)は6ヶ月齢から嚢胞形成が見られる。2つの責任遺伝子に変異が入った場合、Cyラット(Anks6-/-)は3週齢でお亡くなりになり、Pkd1 KOマウス(Pkd1-/-)は胎生致死となる。多発性嚢胞腎を形成するモデル動物の病態は、責任遺伝子によって大きく異なる。 ヒトのPKDの責任遺伝子とホモログな遺伝子に変異が入っているのは、Pkd1 KOマウスである。研究成果を将来的にヒトのPKDに外挿する場合、責任遺伝子が同じ方がその結果を反映する確率が高くなる。そこで、Pkd1 KOマウスを研究に使うために、維持・繁殖および病態の解析を行った。Pkd1 KOマウス(Pkd1+/-)は、6ヶ月齢から嚢胞形成が見られるため、初年度は動物の長期飼育がメインとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒトのPKDを理解するためには、ホモログな責任遺伝子に変異が入ったモデル動物を利用した方が、研究成果を反映しやすくなる。また、ヒトPKD責任遺伝子の変異箇所と病態については議論中であるため、本研究によりホモログな責任遺伝子の変異を解析することは、今後のPKDの病態と遺伝子変異の関係性を理解する上で重要になると考えられる。そのため、ヒトのPKDの責任遺伝子とホモログな遺伝子に変異が入っているのは、Pkd1 KOマウスを研究に用いる事とした。 まず初めにPkd1 KOマウスの腎臓の嚢胞上皮細胞におけるPkd1遺伝子の配列を調べる必要ある。しかし、Pkd1 KOマウス(Pkd1+/-)は、6ヶ月齢から嚢胞形成が見られるため、初年度は動物の長期飼育がメインとなった。長期飼育と同時に、今後、各種栄養を含んだ食事性刺激を与えるための動物の繁殖を行った。Pkd1 KOマウスは繁殖効率が悪く、産仔数も少ない。実験群の母数を増やしてから繁殖を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
9ヶ月齢のPkd1 KOマウス(Pkd1+/-)の腎臓の嚢胞上皮細胞から、DNAに変異が入っていると考えられるImmature tubule cellと正常なNormal tubule cellをレーザーマイクロダイゼッション法を用いて切り出す。切り出した細胞に対して、全ゲノム増幅を行い、Pkd1 KOマウスの責任遺伝子であるPkd1の全塩基配列を次世代シーケンサーにより解析する。 腎臓の病態を組織学的染色や血清の尿素窒素量などで評価する。 また、食事性刺激がPkd1遺伝子の体細胞由来DNA変異にどのような影響を与えるか、その変異が病態にどのような影響を与えるかを検証するために、飼料中の栄養比率を変えた各種飼料をPkd1 KOマウスに4週齢から40週齢まで与える。腎臓の病態はタンパク質の影響を受ける。他と比較した際、カロリー過多はタンパク質の過剰摂取になり、カロリー不足は筋肉の分解によりタンパク質の過剰摂取と同じ状態を生み出す。そのため、各種飼料のカロリーは揃えるとともに、動物に与える量も揃える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定とは異なり、ヒトの多発性嚢胞腎症(PKD)を理解するために、ヒトPKDの責任遺伝子とホモログな遺伝子に変異が入っているPkd1 KOマウスを使用する事とした。Pkd1 KOマウスの腎臓において、嚢胞が形成されるのは6ヶ月齢以降になるため、初年度は動物の長期飼育および維持繁殖がメインとなり、予定よりも使用金額が少なくなり、次年度に回す事となった。次年度は、シークエンス解析および各種栄養比率を変えた飼料の購入などに研究費を使う予定である。
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