研究課題/領域番号 |
18K11329
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊東 拓 日本大学, 生産工学部, 講師 (80433853)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メッシュレス法 / 電磁波伝搬シミュレーション / 微小スケール領域 / ハイブリッド法 / 発泡金属 |
研究実績の概要 |
FDTD法において使用されることのあるサブグリッド法では,異なるサイズのメッシュの繋ぎ目で計算が不安定になり,場合によってはシミュレーションが数千ステップで破綻してしまうことがある.2019年度は,従来我々が提案していたFDTDとメッシュレス法のハイブリッド法を応用し,異なるサイズのFDTDメッシュをメッシュレス法によって接続する方法を示した.本方法は,シミュレーション領域として,幅が一定でない導波路において,局所的に見ると矩形領域になるような部分が複数存在する場合に適用可能である.サブグリッド法との違いは,サイズの異なるFDTDメッシュを直接接続するのではなく,メッシュ間にメッシュレス法での計算領域を設けていることである.本方法を近接場電子顕微鏡プローブ近傍の領域に適用し,電磁波伝搬シミュレーションを行った結果,FDTD法とメッシュレス法の接続部においても視覚的には滑らかに電磁波が伝搬しており,285万ステップ以上破綻せず安定的にシミュレーションできる例を確認した. 加えて,今後のシミュレーションで使用する可能性を考慮し,電磁シールドとして使われることのある発泡金属のモデリングについても検討した.発泡金属は気孔を大量に含んでおり,大きく分けて,Closed CellとOpen Cell の2種類の状態が存在するが,まず,陰関数曲面法を用いて気孔を生成することで,丸みを帯びたClosed Cellの気孔形状を表現した.また,Open Cellのモデリングにも着手し,球とCSGを用いた手法を提案した.同法は非常にシンプルな方法であり,x, y, z方向全てに周期構造を持つため容易にモデルを拡張でき,Open Cell構造を保ったまま任意の形状に切り取れるという特徴を持っている. 研究成果は,国内外の会議や研究会で積極的に発表した.また,幾つかは論文としても投稿し採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,FDTD法で使用されるサブグリッド法の代替手段について主に検討し,従来提案していたFDTD法とメッシュレス法のハイブリッド法を応用し,異なるサイズのFDTDメッシュをメッシュレス法によって接続する方法を示した.今年度実施した本方法を使ったシミュレーションにおいて,比較的長いステップ数破綻せずに安定的に実行できる例が確認できたため,異なるサイズのFDTDメッシュを接続する新たな方法になり得ると考えている. 以上のことより,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに,反射の起きにくいメッシュレス法 (具体的にはMeshless Time-Domain Method (MTDM)) の節点配置について調査し,今年度はこの節点配置も利用して,異なるサイズのFDTDメッシュをMTDMによって接続する方法を示した.今後は物理パラメータの設定や,3次元コードの開発を目指すが,その際に計算時間が増加しすぎる場合には,並列アルゴリズム等についても検討する.一方,比較的計算時間の増加が抑えられる場合,さらなる安定化のために,形状関数生成について検討を行うつもりである.例えば,MTDMでは,シミュレーション領域の境界付近で生成される形状関数が不自然な分布になる場合があり,これがシミュレーションの安定性にも影響を与える可能性がある.不自然な分布になるのは,シミュレーション領域外部に節点が存在しないことが原因であるため,形状関数生成のときのみ使用する仮想的な節点を追加するなどの処理をすることで,解決できるのではないかと考えている. 加えて,シミュレーションの幅を広げるために,今年度までに構築した発泡金属モデルの電磁シールドとしての性能についても調査していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 倍精度計算を高速に実行できる最新のGPUを購入予定であったが,nVidia社・Tesla V100 は2017年に発売された製品であるため,2019年度中に新しいGPUが発売される可能性に期待していたが,発売されないまま年度末を迎えてしまったため.また,新型コロナウイルスの関係で,年度末に予定していた出張が取りやめになったため. (使用計画) 2020年度は,高性能計算サーバの購入を計画している.その際,最新GPUを搭載しているものを購入することを考えているが,GPUの発売スケジュールや価格等を勘案し,状況によってはGPUの搭載には拘らず,柔軟に対応する.さらに,新型コロナウイルスがおさまって出張ができるようになった場合には,国際会議や国内での学会大会・研究会等に参加するための旅費及び登録費として使用することを考えている.
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