研究課題/領域番号 |
18K11494
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
森岡 一幸 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (40408711)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複数移動ロボット / 情報共有システム / ネットワークロボット |
研究実績の概要 |
本研究は、自律移動ロボットの走行のための広域環境地図や環境に応じた行動モデルを生成・更新・共有していくことのできる環境データ取得インフラについて取り組んでいる。特に、ネットワーク化されたロボット等が取得した環境地図や行動モデルを拡張・更新していくことができるロボットネットワークのについて、実験システムやシミュレータの構築を通じて有効な構成法を調査・検討している。
2020年度は、環境地図以外の複数ロボット間およびユーザーとの情報共有システムに関して、実際のシステム開発を通して検討した。特に、環境の形状や広がりなどの環境の特徴に応じて、適した深層強化学習で得られた行動モデルをロードすることで、学習していない環境でも走行可能であることをシミュレーションおよび実環境での実験により確認した。これは、移動ロボットのネットワークにおいて様々な形状における行動モデルを獲得・共有することで、ネットワークに属する移動ロボットが未知の環境でも走行する能力を持つことが出来るようになることを意味しており、複数ロボット間のデータ共有システムにおいて当初考えた環境地図の共有以上に価値のあることと考えている。
また、前年度までに開発した、ネットワークに接続したROSロボットおよびスマートフォンやWebページ間での情報共有のためのプラットフォームとなるロボット管理マネージャを用いて、複数ロボット間のデータ共有に基づくナビゲーションシステムやユーザーによるロボット呼び出しアプリを開発し、ロボットネットワークの基盤ソフトウェアの有効性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の当初の提案では、移動ロボットの自律ナビゲーションに広く使われている占有格子地図を用いたシステムを想定し、複数ロボット間で共有すべきデータとして移動ロボットのスキャンデータや地図情報を考えていた。一方で、近年の深層学習に基づく走行システムの急速な発展により、当初予定した従来型の自律移動ロボットシステムの構成を前提としたロボットネットワークでは不十分であると考え、共有すべきデータとして学習で獲得したロボットの行動モデルも共有・再利用できるようなロボットネットワークに発展させるよう研究の方向性を修正している。
ロボット行動モデルを環境に対して適応的に選択することで未知の環境でも走行できるようなロボットシステムをシミュレータ及び実機走行により実現し、上述したような複数ロボット間でロボット行動モデルを共有し、必要に応じて再利用することで様々な環境での走行ができる可能性を示すことができた。しかし、大学の入構自粛等の影響により実環境での走行実験は不十分である。
今後は当初予定していた複数ロボットを用いた実環境での走行実験だけでなく、Unityなどのゲームエンジンを用いたシミュレータ内で、実機での実験に近い形で多数のROSベースロボットを動的に接続できるネットワークを構築できるようにして、オンラインでも研究が進められるようにする。シミュレータ内でこれまでに研究室で開発したROSベースロボットの管理マネージャやブロックチェーンアプリケーションを実装し、現実世界に多数のロボットが存在することを仮定したロボット社会を構築することで、複数ロボット間でのデータ共有システムに関する実験を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初から予定していた「センサデータの信頼性の担保に関する研究」に関しては、移動ロボットの学習で獲得した行動モデルの共有という方向性で研究を進めたため、必ずしも「センサデータ」自体についてネットワーク上で信頼性を評価していく必要性は無くなっている。一方で、新たな方向性である移動ロボットの行動モデルの共有や再利用においても、同じようなモデルの信頼性の評価は必要になる可能性がある。複数のロボットが様々な環境で何度も使用した行動選択モデルを、ロボット間で共有される情報のう ち信頼性が高いものとして取り扱い、行動選択モデルの作成主体に対してインセンティブを付与する。それによりより有効な行動選択モデルを学習することにつなげていくことができるシステムになると思われる。
2021年度に新規に開発する、複数のROSロボットを同時に動作させることのできるシミュレータ上にて、これまでに開発したROSシステムの管理ソフトウェアやイーサリアムのスマートコントラクトを用いたロボットネットワークを実際に構築して、共有するデータ(行動モデル)の信頼性の評価も行えるようにする予定である。多くのロボットが存在しそれぞれが独立して行動できるシミュレータであり、多数のロボットが自然に存在したがいにネットワーク化された「ロボット社会」を、シミュレータ内でデモンストレーションできることが最終目標である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、大学への入構自粛期間があり、予定していた複数ロボットを用いた実環境での実験ができなかったため、移動ロボット開発や関連するネットワーク機器等の整備に必要な機器備品を購入しなかった。また国内外での学会発表のための出張旅費も使用することが無かったため、大幅に使用額が少なかった。 次年度は、当初の研究の方向性から少し変更があるので、シミュレータ向けの機器備品整備を行うとともに、前年度実施できなかった実機を用いた複数ロボットのデモンストレーションを行うための機器備品整備も行う。国内外の状況次第だが、出張が可能になれば学会発表のための旅費の支出も行う可能性がある。
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