ベトナムと中国の関係は,両国間で対立や衝突が発生すると注目されるが,それ以外の平時の関係はあまり注目されることがないといってよい。学術研究も個別のトピックに特化したものが多く,両国関係を長期的な視点に立って考察した研究も1960年代以降皆無である。本研究は「同志・兄弟」という語に着目して,比較的長期にわたる両国関係を分析した結果,平時にみえるような時期であっても,両国間で絶えず駆け引きが続いていることを明らかにしえた点で意義があった。その中で,ベトナムが中国との対立を避けながらも,巧妙な戦術で中国から距離を保っている点は,日本の対中外交にとっても示唆に富むものであるといえよう。
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