本年度は、令和2年度および令和3年度においてコロナ禍という社会状況のために当初の研究実施計画で予定していたものの延期になっていたタイにおける現地資料調査を実施することができた。 タイ・フィルムアーカイブにおいて、20世紀前半のタイと日本との関係に触れた資料調査を行った。同時にドキュメントを中心とする映像資料調査を実施した。またタイ国立図書館、チュラーロンコーン大学図書館、タマサート大学図書館にてジャポニズム関係の文献調査を行った。、 過去に実施した調査および本年度の現地調査によって新たに得た資料をもとにして、本研究の目的である、ラーマ6世・7世期(20世紀前半)に発表された文学テクスト、雑誌・新聞等の同時代資料、映画作品を対象とした、タイから日本へ向けられた言説・表象に着目した研究分析を行った。これにより当時のタイからの日本認識が、西洋オリエンタリズムと同種のものか、あるいはタイ独自のバイアスが加味されているのかを検証し、文化的側面からみた日=タイの関係性の実相を明らかにすることができる。 今後、個々の詳細な作品分析を施したうえで研究を統括して文章化し、成果発表として一冊の本にまとめる予定である。また、国際学会等で発表を行い、ジャポニスム、オリエンタリズム研究の専門家とも意見交換を行い、「ラーマ6世・7世時代の資料に見るオリエンタリズムとしての日本表象の研究」の意義を国外においても示していきたい。
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