研究課題/領域番号 |
18K11814
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
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研究分担者 |
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60152063)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 伝統工芸 / 繊維植物 / 栽培地 / 祭祀植物 / 野生化 / ヒンドゥー教 / 地域景観 / 逃げ出し |
研究実績の概要 |
調査対象地の石垣島では、現地の協力者とともに、現在も苧麻栽培がおこなわれている3カ所とかつての跡地1カ所を調査した。栽培が確認された箇所での栽培面積はいずれも大規模ではなく、民家の庭や菜園、墓地の一部を利用した小規模栽培であった。一方、かつて栽培がおこなわれていたという場所は比較的面積が大きく、現在は牧草地とされていた。この牧草地周縁にはかつて栽培されていたものと思われる苧麻が生育していたが、その形態は、現在も栽培維持されている3か所のものとは違い、野生種に近かった。今後は、苧麻の栽培種、中間種、野生種の形態的差異を詳細に調べていく必要がある。苧麻栽培は、八重山諸島で広く行われているが、宮古島もまた、宮古上布の材料として同様に栽培が行われてきた。そのため宮古島での調査を加え、その栽培や利用につい現地調査を行った結果、宮古島では上布の材として野生の苧麻も利用するというが、商品としての「八重山上布」には、購入した苧麻の繊維を使用していることが分かった。 ネパールでのマリーゴールド栽培の状況は、カトマンズ市内など都市部では現代的住居構造のベランダや屋上にコンテナ栽培されており、郊外では、伝統的住居の中庭でのコンテナ栽培と居住地前庭の路地栽培および大規模なマリーゴールド畑が見られた。特に、郊外では、逃げ出しと見られるマリーゴールドの存在が多数確認でき、それらの花序もまた採取され、利用された形跡が見られた。寺院や伝統的住居には、ネパールヒンドゥーに係る彫刻等が施されている。これらの写真撮影と関連資料の収集を行ってきた。今後は、写真や絵図の解読によって、祭祀植物のリスト化とマリーゴールドの導入理由について調査していく。大阪府立大学公開講座第13回市民フォーラム「辟邪 まよけ」において、この成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
栽培苧麻の野生化の実態について、野生種および栽培種との形態的違いを明らかにするため、すでに国内の主要な標本庫での標本写真撮影は終えているが、石垣島での野生化苧麻のサンプルが十分収集されてなく、形態的特徴を明らかにするに至っていない。また、ネパールでのマリーゴールド利用の文化的背景を探るためにネパールヒンズー教、仏教に関連する図録および現地寺院の装飾等の資料は順次収集しているが、膨大な資料と解読の困難さから植物記載を抽出する作業の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、苧麻の野生化の実態に関して、引き続き現地調査を行い、調査地の栽培、野生化、野生苧麻とこれまで収集した苧麻の標本写真との植物形態的比較を行い、それぞれの特徴を明らかにする。文献調査や聞取り調査による苧麻の利用や導入と合わせて、成果報告する予定である。また、ネパールでの宗教と植物利用との関係性について図像調査を急ぎ行い、過去の写真(中尾佐助データベース等)からネパールヒンドゥー教や仏教に関連した植物の有無やその種類、植栽場所などについて抽出し、現在との変化を論考する。宗教と結びついた植物と景観形成について研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は沖縄を中心とする国内調査およびネパール、タイ北部の海外調査を別の研究課題と同時に行う必要があったため、渡航費に変更が生じた。また、購入予定の物品(衛星写真)の選定に時間を要し、購入できていない。翌年度においては、国内外の調査時間を延長し、研究情報の取集に努めるとともに、必要な物品の購入とデータ整理等に必要な人件費を使用する。
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