令和5年度は、研究分担者である山村が本研究課題に関連する論考2編を発表した。「コンテンツツーリズムと自治体 : コンテンツツーリズムの定義・歴史・特性と自治体のかかわり方」『都市とガバナンス』(40号)では、コンテンツツーリズムの定義や変遷を整理したうえで、コンテンツツーリズムの特徴として、①知的財産が観光資源となること、②観光資源に恵まれていない地域であってもコンテンツを活用することで観光目的地になりうること、③コンテンツツーリズムの本質は、観光者と地域住民がコンテンツを介して「共感」を楽しむ点にあることを指摘した。③は、観光者(ゲスト)と地域住民(ホスト)のギャップを強調することが多かった従来のツーリズム研究に対する問題提起となっている。さらに、トライアングル・モデル(コンテンツ製作者・ファン・地域社会の三者関係からコンテンツツーリズムをとらえるモデル)における新たなタイプとして、「三者コラボ型」(製作者・ファン・地域社会の三者がコンテンツ製作に参画してコンテンツツーリズムを生み出す形態)を提示した。 また、研究の総括として、大谷と山村に研究協力者を加えた4名でディスカッションを行った。その際、「ローカルのコンテンツ化」から「コンテンツのローカル化」へという流れの中にコンテンツツーリズムを位置づけて議論を重ねた。「ローカルのコンテンツ化」とは、実在の地域を作品の舞台ないしはモデルに設定することであり、「コンテンツのローカル化」とは、地域サイドがコンテンツ製作に参画したり、コンテンツをより活用しやすいものに変えていくことである。前述の「三者コラボ型」は「コンテンツのローカル化」にあたり、コンテンツツーリズムの持続性を考えるうえで重要なモデルであることを確認した。ディスカッションの内容は、企画中の書籍に収録する予定である。
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