研究課題/領域番号 |
18K11960
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
宮田 圭介 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (40387527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発達障害 / 免許 / 特別支援教育 / デザイン / 運転 / 自動車 / 就労支援 / 学習 |
研究実績の概要 |
本研究では発達障害者の自動車運転免許取得を対象として,学科教習内容を可視化して理解を促進する自習教材の試作を行ってきた.2022年度は自動車教習所の協力の下に,広汎性発達障害の診断を受けた教習生1名を実験協力者として,試作教材の有効性確認実験を含めた学習支援活動を実施した.試作した自習教材アプリは早期評価のために30問しか制作しなかったため,市販の学習教材アプリと併用して学科試験対策を実施した.入所26日後の第一段階の修了検定で技能教習は合格したが,仮免許学科試験は不合格となった.その後も2回不合格になったため,効果測定という模擬試験をのべ31回受けていたが,実験協力者は間違えた設問を調べる習慣がなく,誤答を気にせず解いている様子が観察された.そこで,学習教材アプリから市販の問題冊子を解く方法に変更して,間違った設問に印をつけて見直すよう助言した.また,早く解答する方が望ましいとの自己判断により,制限時間30分の効果測定を10分強で解答していたため,30分かけて解くようにアドバイスした.その結果,入所40日後の4 回目の仮免許学科試験で合格した.第二段階の学科教習は順調に進んで,入所57日後の卒業検定に合格した.入所60日後の運転免許センターでの学科試験も1回(94点)で合格した. 試作教材アプリについては,実験協力者は分かりやすいとコメントしていたが,学習効果が認められたとは言い難かった.この実験協力者は文章だけで教習内容を理解する能力があったと推察されたためである.実験協力者の入所から卒業までの学習行動を分析した総括になるが,保護者,教習所,支援者(研究代表者)の三者が連携して学習支援を行ったおかげで順調に免許取得できたと思われる.発達障害のある教習生の学習を支援するには,第三者に学習の様子を伝える機能が求められることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では研究協力機関の自動車教習所と連携して,発達障害のある教習生20名を対象に自習教材アプリの有効性評価実験と改良を行い,2021年に研究を完了する予定であった.しかし,2020,2021年度はCOVID-19の感染拡大による出張制限や,自動車教習所の入所制限のため,予定したすべての実験を中断せざるを得ない状況になった.ようやく2022年に実験協力者1名による 試作教材の有効性確認実験を実施できたが,健常者対象の実験と異なる想定外の行動が観察されたため,実験協力者1名の実験結果分析に6ヵ月程度要することが判明した.また,発達障害のある教習生の指導にはマンパワーを要するため,自動車教習所の閑散期でなければ実施が難しいので,実験実施期間も制約されていた.
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今後の研究の推進方策 |
自動車教習所の協力の下で,発達障害のある教習生の研究協力を得る目途が立った.そこで,研究期間をもう1年間延長し,2022年度の実験成果を活用して,学科教習に限定して試作教材による発達障害のある教習生の学習支援実験を行う.そして,次期支援研究につながるよう,発達障害のある教習生の分析データ蓄積を図っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間は満了となったが,自動車教習所において,発達障害のある教習生の研究協力を得る目途が立った.そこで,研究期間をもう1年間延長し,本研究の知見を活用して,学科教習に限定した支援方法の実験とデータ収集を行うため,実験実施費用と試作教材の改良費,学会発表費等を計上する.
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