研究課題/領域番号 |
18K12027
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 博之 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20272982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 位相イメージング / X線 / 放射光 / 屈折像 / 散乱像 |
研究実績の概要 |
平成30年度では、本研究課題で提案しているイメージング法において、最も重要な部分であるⅩ線用の単スリットを購入し、現有の移動ステージと組み合わせて装置の光学系を作製することができた。また、移動ステージによる試料の移動と撮影を同期させ、連続撮影が可能な自動システムを構築することもできた。そして、既存のソフトウェアに機能を追加する形で、得られた多数のデータを一括処理して位相像を得るためのソフトウェアも作成できた。このことにより、これまで手動で行ってきた方法に比べ、短時間での撮影、および解析、画像化を行うことが可能になり、一連の作業が迅速化された。さらに、X線光学の立場から、本手法で画像化する量、特に位相像である屈折像と、散乱像の意味を理論的に説明できた。つまり、検出器の分解能よりも十分大きな物体については屈折像として、分解能以下のサイズの物体の集合体については散乱像として検出できることが分かった。そして、実験的にもそれを確認できるデータを得ることができた。 加えて、次段階の目標の一つである、撮影に使用するX線のエネルギーについて、予備的な実験で使用した15keVを、20keVに上昇させても鮮明な像を得られることが確認できた。また、若干鮮明さに劣るが、30keVでも撮影を行い位相像を得ることが可能であった。 以上より、平成30年度において、本研究課題で当初予定していた位相イメージング装置の作製と自動化、および、処理ソフトの作成はおよそ実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における第一段階の目的であった、単スリットを用いた位相イメージング装置の開発においては、海外で同様の手法を使ったイメージング装置の開発が予想以上に進展している。そのため、装置開発の面での新規性は当初予定したほど十分な独自性を発揮できなかった。しかしながら、装置能力の評価方法、具体的には屈折像、散乱像における分解能の定量評価を行う方法の開発および、実際に立ち上げた装置における分解能評価という面においては、他に先駆けて成果を出すことができた。このような装置能力の定量評価は、装置開発の段階においては諸条件を決めるために必須であり、この点においては有利な立場にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題における第一段階の目標である、単スリットを用いた位相イメージング法用装置の作製は完了した。また、屈折像、および散乱像用の分解能評価方法、およびそのための評価用試料も開発が終わっている。そこで第二段階では、それらの試料を使用して、スリット幅や試料‐検出器間距離等の撮影条件を変化させつつ、分解能評価を行い最適な撮影条件を見つける。そして、撮影時間のさらなる短縮と高分解能化を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、本研究課題で使用する単スリット法装置の重要な部分の一つである、試料移動ステージを購入予定であったが、現有のステージが流用可能であることが判明したため購入の必要がなくなった。また、高エネルギー加速器研究機構で実験を行う際の補助者の雇用を予定していたが、当該研究所スタッフから十分なサポートが得られたため、必要がなくなったことにより未使用額が発生した。 平成31年度においては、最適な撮影条件を見つけるため、スリット幅や試料‐CCD間距離等の諸条件を変更しつつ分解能の評価を行う。そのため、多量の画像データが蓄積される。そこで、大容量のハードディスクを購入する。平成30年度に得たデータ量から推定し、本来予定していたよりもさらに容量が大きなハードディスクを購入予定である。平成30年度に生じた残額は、そのために使用する予定である。また、条件を変化させるためのスリット調整用のステージ、CCDカメラ移動用のステージの購入については計画通りに使用する。平成30年度で得られた高エネルギー加速器研究機構スタッフの補助は、平成31年度においては受けられない。そのため、実験補助者の雇用も計画通り行う。さらに、得られた成果の一部を発表するため、学会参加のための費用、論文の校閲費も計画通り使用する。
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