研究課題/領域番号 |
18K12059
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林田 祐樹 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10381005)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医用生体工学 / 神経補綴 / 脳皮質内刺激 / 生理学実験 / 埋植型電子デバイス |
研究実績の概要 |
難治性の神経機能障害に対する神経補綴治療の確立には、脳などの組織内における神経細胞群の3次元空間的活動を制御・駆動する手法・技術が必要である。本研究の目的は、脳皮質内に配置した複数電極から電流場刺激を与え、これに対する時空間的な神経応答を高速膜電位イメージング法によって計測し、両者の定量的関係を明らかにすることである。1年目の2018年度は、動物実験用の刺激システムを構築すべく、先行開発の多チャンネル神経刺激デバイス(専用VLSIチップ)をデジタル制御するためのハードウェアモジュール、および多チャンネル時空間パターン刺激を設計するためのGUIソフトウェアを設計・開発した。これと並行して、脳皮質内の単一電極刺激に対する神経細胞群応答について、マウス脳切片試料を用いた高速イメージング実験を行い、その応答の詳細な時空間的特性とメカニズムに関する知見を国際学術誌論文として発表した。この知見から、複数電極を用いた電流場刺激に対する神経応答を理解するためには、単一電極刺激および二電極刺激の各々に対する神経応答を定量的に比較解析することが最優先であると判断した。そこで初年度末から2年目の2019年度にかけ、その比較解析を行うべく、マウス脳切片試料を用いた高速イメージング実験を実施した。具体的には、2つの電極間の距離をおよそ0.1,0.3,1 mmとした場合について、2つの電極から同時に閾値上強度の電流刺激(単一パルス刺激および連続パルス刺激)を与えたときの神経応答の時空間分布(①)と、2つの電極から各々独立してその刺激を与えたときの神経応答分布の線形加算(②)との比較を行った。その結果、1)電極間距離が比較的短い場合には、①の応答強度が②に比べて小さい傾向にあること、2)電極間距離が長い場合には、①の応答分布が②のような線形加算モデルによって、大まかには説明可能なこと、などが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の立案当初からは、その具体的な研究計画に修正を施した。但しこれは、初年度の研究成果に基づいて行ったものであり、我々の最終的な研究目標に向かう確実な前進であった。「研究実績の概要」に記載した本年度の生理学実験の結果は、比較的単純とも考えられたが、世界的には前例のないものであり、さらに、脳組織内で電流場刺激を生成する複数電極の配置設計における定量的指針とその科学的根拠を与えるものと言える。以上より、本年度は、研究課題の設定目的に対して十分な成果が得らえたと考え、区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題3年目となる2020年度から、研究代表者の所属機関が変更となった。そこで、研究の遂行に必要な生理学実験環境の再構築を行う。但し、2019年度末頃から始まった、新型コロナウィルスCOVID-19の世界的パンディックが与える研究活動への影響を慎重に観察し、必要に応じて研究期間の延長を行う。研究活動および生理学実験の再開の目途が立ち次第、2019年度と同様の実験についてのデータ例数を増やし、研究成果のまとめに入る。
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