難治性の神経機能障害に対する神経補綴の確立には、脳などの組織内における神経細胞群の3次元空間的活動を制御・駆動する手法・技術が必要である。本研究の目的は、脳皮質内に配置した複数電極から電流場刺激を与え、これに対する時空間的な神経応答を高速膜電位イメージング法によって計測し、両者の定量的関係を明らかにすることである。1年目の2018年度は、先行開発の多チャンネル神経刺激デバイスを制御するハードウェアモジュール、および多チャンネル時空間パターン刺激を設計するGUIソフトウェアを設計・開発し、動物実験用刺激システムを構築した。また、脳切片試料を用いた高速イメージング実験を通して、脳皮質内の単一電極刺激に対する神経応答の時空間的特性とその神経回路メカニズムに関する重要知見が得られ、これを国際学術誌論文として発表した。この知見から、単一電極刺激および2本電極刺激の各々に対する神経応答の定量的比較解析が最重要であると判断し、2年目の2019年度は、高速イメージング実験を通じて、脳皮質内の2本電極刺激に誘発される時空間的神経応答の線形加法性と、その電極間距離依存性に関する新たな知見を得た。3年目の2020年度は、研究代表者の所属機関異動に伴い、実験環境の再構築と実験再開を目指したが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて計画が遅れたため、研究期間延長を申請した。4年目の2021年度は、前年度と同様に様々な制限が続いたが、高速イメージング実験の再開に至り、一昨年度の研究成果を補う実験結果を得た。
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