研究課題/領域番号 |
18K12165
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丹下 裕 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50435434)
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研究分担者 |
片山 英昭 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30280407)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / スマートフォン / 歩行支援装置 / 深度画像 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、視覚障害者の歩行支援として小型・軽量な歩行支援装置の開発を行った。その中でもスマートフォンを活用した視覚障害者向け障害物検出システムは、触地図システムとも連携が取れるため、令和4年度は優先的にシステムの改良を行った。 ①障害物検出方法の改良 先行研究では、障害物が存在しない場合のカメラから地面までの距離を、地面からの角度と地面からカメラまでの高さを利用することで距離を推定し、深度画像から得られた距離と比較することで閾値を超えた場合に障害物として検出する。しかし、歩行実験を行ってみると道路の側溝や駅ホームの段差、ポールといった視覚障害者にとって危険な要素の特徴が捉えられているが、階段の1段目や自転車の輪郭などの検出に失敗しているケースが確認できた。また、角度の誤差により、遠くの場所の地面を誤って障害物と判定してしまうこともあり、閾値をより高い値に設定する必要がある。そこで新たな検出方法を考案し、深度画像の各ピクセル間の差より面の向きを算出することにした。この方法では、地面に近い領域でも問題なく検出可能であるが、実際は駅ホーム等の危険な大きな段差を見逃してしまう可能性がある。先行研究では閾値を大きく設定しても大きな段差を高い精度で検出できるため、先行研究と提案方法を組み合わせることで障害物検出を行うシステムを開発した。 ②立音響技術による伝達 利用者へ障害物の位置と距離を提供するものとして、立体音響技術を用いて、障害物の位置から電子警告音が仮想的に聞こえるものを開発した。利用者は直感的に障害物の位置を把握することが可能となる。また、警告音を出す機材については、耳を塞がない開放型完全ワイヤレスイヤホンを採用し、視覚障害者が環境音を聞き逃すことがないようにした。 ③視覚障碍者の方への利用 開発したアプリケーションを視覚障害者の方に試用してもらい、システム全体の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの成果から、本研究の基本技術は構築できた。視覚障害者が触地図を使って歩行することを考えると、小型・軽量な歩行支援装置の開発も検討する必要があると考え、優先的にシステムの改良を行った。この結果、予定よりも遅れが生じてしまい、地図アプリの操作性の向上や触地図情報を配信する電子マップサーバの構築、運用試験が実施できなかったため、当初の予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、次の課題を実施する。 ①地図アプリの操作性の向上 視覚障害者の利用に特化した触地図アプリを制作する。具体的にはスクリーンリーダを利用し、行先、目的地の入力による道順検索やよく使う道順の登録等の機能を実装する。表示する触地図情報については個別設定ができるようにし、視覚障害者のニーズよって地図情報の表示を選択できるものとする。 ②触地図情報を配信する電子マップサーバの構築 本システムでは、携帯情報端末の位置情報付きの地図情報を画像として取得し、携帯情報端末のメール機能を使い、触地図サーバに送信する。この画像を解析することで触地図を生成し、位置情報を参照して触地図配信用サーバの電子マップ上に触地図を配置する。利用者は、配信された電子マップの触地図情報を携帯情報端末で参照し、それと連動した触地図ディスプレイにより周囲の地図情報を把握できる。令和5年度は、令和元年度の成果である地図情報を点図で表すためのプログラムをサーバ上で動作させ、携帯情報端末の位置情報付きの地図情報をサーバに送信した際に、触地図情報が得られることを確認する。また、全体システムの運用実験も行う。 ③視覚障害者のための障害物検出システムの開発 前年度の取り組みを改良し、視覚障害者に実際に使用してもらい、使えるシステムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:令和4年度はコロナウィルス感染症の拡大により、視覚障害者を含む運用実験が実施できてないため、必要物品が購入できずに物品費に残額が生じた。 使用計画:令和5年度は、システムの完成を目指し、可能な限り視覚障害者に意見を求めて運用試験を実施したい。
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