1、13世紀後半から14世紀前半の天使論に関する体系的なモデルを完成させるために、(1)西洋中世の天使論を代表するトマス・アクィナスのモデルを、井筒俊彦およびアンリ・コルバンにおける天使論のモデルと比較する論文を公刊し、それに関わる研究発表も行った。(2)さらにトマスの個体論を神の三位一体に関する思想のなかに見出すことで、天使論にも共通する存在論の体系を確認する論文を公刊した。(3)さらにトマスが想定する悪の存在論の基本的な骨格を明確化することで、天使とは対極に位置する悪魔にもつながる悪の思想を概観する論文を公刊した。(4)西洋中世哲学の影響を近世日本におけるキリシタンの世紀のなかに見出すことで、霊的な存在者について語る思想的な源泉の一つである偽アウグスティヌス『霊と魂について』の影響力を新たに確認する論文を公刊した。 2、翻訳研究としては、(1)ドゥンス・スコトゥス著『「命題集」講義録』(レクトゥラ)第二巻第三区分第一部第四問題、(2)トマス・アクィナス著『「魂について」註解』第三巻第七章、(3)リューベックのヘンリクス『第一任意討論集』第十九問題、(4)ピエトロ・ポンポナッツィ『魂の不死性について』(第五章から第八章まで)の翻訳研究を進め、大学紀要にそれらの成果を発表した。これらは基本的に本邦初訳である。
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