従来,インド初期仏典中には,三世に亘る十二支縁起説は確認されないというのが定説であった。これに反して本研究は,それに該当する十二支縁起説が,「分別経」(『相応部』12.2)中に確認されることを指摘した。この十二支縁起説では「識」「触」「受」「愛」の4支のみが,例えば「六識身」の様に「六X身」と表現される。本研究はその理由をも明らかにした。すなわち,六内処に単数形,六外処に複数形を用いる「六処」に始まり,「識」「触」「受」「愛」の生成を説き,「識」以降の4支を「六X身」と表現する縁起説を継承している為である。「身」の語により,六外処の複数性が示されている。
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