研究課題/領域番号 |
18K12223
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斎藤 慶子 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 学術研究員 (20805832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バレエ / うた / ジャポニスム / 文化 / ダイタ |
研究実績の概要 |
19世紀末のロシア国内の主要な劇場で、日本の文化表象を取り入れたバレエが少なくとも3作品上演された。それらの作品には日本文化を理解しようとする熱意が表れており、ヨーロッパの他国のジャポニスムにはない独自性が認められる。日本文化受容経路の調査を行うことで、後の対日文化外交においてバレエが手段として利用されることになる素地を詳らかにすることを目的とする。 1896年4月28日にボリショイ劇場(モスクワ)で初演された『ダイタ』(ゲオルギー・コニュス作曲)の曲には日本のうたが使用されている部分が8つあることが判明している。ところが、楽譜上に日本の曲の使用が断り書きされていながら、いまだ元曲が不明の部分もあり、成果報告および情報収集の一環として、『ダイタ』の一般公開と学会報告を行った。 1)レクチャー・コンサート「日本のうたとロシア・バレエの出会い 明治の流行歌とバレエ『ダイタ』(1896年)」2020年1月20日 スタインウェイ・サロン東京 松尾ホール 『ダイタ』の紹介のほか、ソプラノ歌手鷹野恵氏とピアニスト澤田まゆみ氏に、ロシアの海軍軍楽隊長マフロフスキーが日本で採譜したうた(コニュスが『ダイタ』を作曲した際に参照した)と、バレエ曲を実演していただいた。コンサート準備過程で日本のうたや三味線の専門家に調査にご協力いただき、不明曲の一部が判明した。 2)学会報告 報告題目「19世紀末のロシア・バレエ中の古い日本の旋律の起源を探る バレエ『ダイタ』(1896年、コニュス作曲)」2020年2月18日 国立研究大学高等経済学院東洋学・西洋古典学研究所(モスクワ)主催第22回学会「日本の歴史と文化」
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会報告だけでなく、一般にも研究成果を共有することができた。また、上記以外に、バレエ公演(科研費は使用しなかった)の共同企画を行い、一般への周知に努めた。2019年8月6日、於札幌市教育文化会館、北海道インターナショナル・バレエ・ダンス・カンパニー主催、アナトーリ・スタブロフ振付、澤田まゆみピアノ演奏、左記カンパニー出演。公演については右記記事に掲載していただいた。杉尾直哉「日本題材の『ダイタ』 幻のロシアバレエ 来月6日 札幌で120年ぶり再演」『毎日新聞』地方版、2019年7月26日付。 また、2018年度に参加した北海道大学・モスクワ大学交流デー(於モスクワ大学)で行ったバレエ『ミカドの娘』に関する報告をまとめ直した論文は、近刊予定である。
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今後の研究の推進方策 |
『ダイタ』、『ミカドの娘』についての調査をさらに進めるとともに、バレエ・パントマイム『月から日本へ』(1900年)および、サーカスで上演された喜劇バレエ・パントマイム『日本、もしくはミカドの3人のおちゃめな女性たち』(1890年)についての文献調査にも本格的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はおおむね計画通りに助成金の使用を行った。翌年度分と合わせて、ロシアでの文献調査のための出張費用として使用する。
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