研究実績の概要 |
2020年度は日本音楽表現学会において、澤田まゆみと共同で誌上報告を行った。「コニュス作曲バレエ《ダイタ》(1896年) ロシアに渡った日本のうた」と題し、バレエ『ダイタ』に使用された日本のうたについて分析を行った。斎藤は、ロシアにおける日本の音楽受容の観点から、19世紀末および20世紀初頭の新聞雑誌記事を参照し、『ダイタ』の音楽についての批評記事と比較検討した。20世紀初頭に書かれた記事には、日本の音楽に対するロシア人の抵抗感があきらかであった。それに対して、『ダイタ』は高評価がなされていた。このことは、『ダイタ』のために日本のうたを長崎から書き送った海軍軍楽隊長マフロフスキーおよびバレエの作曲を行ったコニュスの紹介者としての貢献度の高さを証明する。澤田は、マフロフスキー採譜の日本の歌とコニュスのバレエの楽譜(ピアノ譜)を比較し、音楽学的な観点から詳細な分析を行った。
そのほか、バレエ・パントマイム『月から日本へ』(キスリンスキー作曲、1900年)についての論文を執筆し、投稿準備中である。主に以下先行研究と照らし合わせて検討することで、ロシアにおけるジャポニスムの特徴をうかびあがらせようと試みた。Rosamund Bartlett, “Japonisme and Japanophobia: The Russo-Japanese War in Russian Cultural Consciousness,” The Russian Review 67 (January 2008), pp. 8-33.馬渕明子『舞台の上のジャポニスム 演じられた幻想の〈日本女性〉』NHK出版、2017年。
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