研究課題/領域番号 |
18K12223
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
斎藤 慶子 上智大学, 外国語学部, 研究員 (20805832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジャポニスム / バレエ / サーカス / 帝室劇場 / パントマイム |
研究実績の概要 |
資料調査のための渡航の機会をうかがっていたが、安全確保の見通しが立たなかったため、国内およびオンラインで収集できる資料の調査に取り組んだ。 バレエ・パントマイム『月から日本へ』(キスリンスキー作曲、1900年)について2020年度から準備していた論文の執筆を続行している。目下のところ、以下の五つの観点に注目している。 第一に、皇帝ニコライ二世による対日本外交政策の変遷とジャポニスムのバレエの上演状況の照合。第二に、ロシアの帝室劇場におけるジャポニスムのバレエの上演回数および収益と、同時代の人気作品のそれとの比較。これをとおして、観客の意向とは別の事情でジャポニスム作品の上演が打ち切られた可能性が浮かび上がってきた。第三に、「バレエ・パントマイム」という芸術ジャンルの起源の探索。フランスの舞台芸術文化やサーカスの伝統をさかのぼる必要性に気づいた。第四に、コメディア・デラルテとジャポニスムの同居というプロットの特徴。第五に、各ジャンルを代表する登場人物に付与されている性格および相互の関係性である。西欧の代表者ピエロ>日本人という力関係は厳然としてあるものの、フランスのジャポニスムの舞台芸術作品に登場する人物たちとはまた違ったまなざしが見て取れ、より分析を進めて行くことでロシア独自のジャポニスムの在り様をあきらかにしたい。 バレエは視覚芸術であるから写真資料を提示できれば論じている内容の説得力を増すことが期待できる。これについては、アーカイブ訪問のための渡航の機会を待つか、もしくは別の入手経路を探ることが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、資料調査のための渡航ができなかったことは研究の遂行の妨げにはなっている。しかしバレエ・パントマイム『月から日本へ』の検討を通じて、サーカスやコメディア・デラルテ、フランスの舞台芸術文化とのつながりを確認することが出来た。このことは研究の視野を広げた。
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今後の研究の推進方策 |
渡航の見通しが立たないうちは、国内およびオンラインで収集できる資料の調査を続行する。ただし、渡航できない場合に備えて、今後はフランスを含めた諸外国の舞台芸術分野における舞台芸術作品についても並行して調査していきたい。パナソニック汐留美術館にて開催されたブダペスト国立工芸美術館名品展で鑑賞した作品群は、ひとくちにジャポニスムと言っても日本美術のどの点にインスパイアされるかは各国各アーティストでさまざまであることをあらためて認識させた。ロシアと諸外国との比較検討という事を考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の前半は、所属機関が海外渡航を制限していたため、予定していた調査を行うことができなかった。後半は、渡航の安全性の確保が困難であった。そのため、予算から残額が生じた。渡航の目処がつかない間は、主に図書や複写資料の取り寄せに資金を使用する。
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