2023年度もロシアへの渡航が難しい時期が続いているため、国内での調査を継続している。 2023年度のジャポニスム学会の国際シンポジウム(11月26日)は、テーマが「「動き」の中のジャポニスム」ということで、自分の関心とも近く、高い関心を持って拝聴した。報告者の視点は多岐にわたり、舞台作品のジャポニスム研究の様々な研究手法に触れ、新しい知見を得ることができた。 2022年度の関西例会に引き続いて、舞台の上のジャポニスム作品の上演例の発見が進んでいることが自分の研究の考え方に変化を与えている。近年の報告で示されたイギリスやフランスの舞台で上演された舞台芸術作品は、日本文化理解の様々な在り様を提供している。今までは、装飾面についての表面的な関心が既定路線となっていたことを示唆する先行研究が多かったが、じつは日本の風俗にも踏み込んだ実際により近い日本文化理解を示す作品が上演されていたことが確認された。 本研究では今まで、ロシアのバレエ作品の中に見られる、東洋と西洋の対立、往々にして西洋の卓越性を強調する構造を指摘し、他国のバレエ作品との比較において日本人との「距離感」の違いに目を向けてきた。しかしながら、他のジャンルや、またあらたに見つけられたジャポニスムの舞踊作品について知るにつけ、ジャンルとしての特性を考察したり、情勢による表現の変化により細かく目を配る必要があることをより強く意識するようになった。
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