研究課題/領域番号 |
18K12232
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
難波 阿丹 聖徳大学, ラーニングデザインセンター, 准教授 (90781089)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アテンション / スクリーン / メディウム / アフェクト / 管理 / 制御 / 技術 / 環境 |
研究実績の概要 |
本年度は、観客/視聴者/ユーザー等のアテンション管理/制御技術について、視・聴覚的観点のみならず、「触覚的(身体的、皮膚感覚的)アテンション(affective attention)」に関する理論的知見を深めた。その際、各メディウムの感覚比率における優位性を総合的に把握することによって、映像や動画等の技巧が、身体(皮膚)感覚を制御するメカニズムをいかに発動するか明らかにすることを目指した。 本年度は「触覚的アテンション」と関連する「アフェクト(情動)」をテーマとした「情動」論研究会を複数回実施した。加えて、芝浦工業大学の「広告デザイン特論(The Advanced Seminar in Advertising Design)」にて各種広告における「触覚的アテンション」の管理/制御についての講演「Designing Collaboration between Technology and Environment: Management of Affective Attention for Advertising」を行った。そして現在は、映像(動画)技巧を支援する技術/環境の複合的調査で得られた知見を総合し、まとめ上げる作業を行っている。 上記の成果をもとに、絵画、写真、映画、テレビジョンといった旧来のメディウムのみならず、近年発達しているグラフィカルユーザーインターフェイスの視・聴・触覚的編成に注視し、スクリーン進化史のより精緻な記述を目指していく。そして、今日インターネット上の動画サイトが、ポップアップ広告等のアテンション管理/制御技術によって人々の考える力を喪失させ、文化や社会行動を誘導しているしくみの解明とその対策の礎を築くことが今後の研究の展望である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚性や聴覚性のみならず、触覚性を理論化することで「アテンション」理論を深める視角が得られ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めるに従い、映画やテレビジョンがスクリーンに関する操作性のイディオムを備えておらず、観客/視聴者の身体管理/制御においては「不十分」なメディウムだと明らかになった。それゆえ、「メディア(複数形)/メディウム(単数形)」概念の基本前提から問い直し、これらを進化生物学的な隠喩において書き換えることで、新しい「メディウム」理論研究の地平を切り拓くことを目指す。今後の研究では、各メディウムとその操作者の感覚比率を調整するノードとしての「装置/道具」と「環境」とのカップリングに着目し、その複合的な進化の様態を描き出していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究計画の変更を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、本研究計画を学術書としてまとめあげるための物品費として、書籍購入費用に充てる予定である。
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