研究課題/領域番号 |
18K12245
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武田 一文 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (90801796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ビザンティン美術 / 聖堂装飾プログラム / キリスト教図像学 |
研究実績の概要 |
南部イタリアおよびトルコ・カッパドキアの聖堂装飾を調査した。イタリアではBari、Monte Sant’Angelo、Barletta、Melfi、Matera、Squinzano、Conversano、Lecce、Tursi、Padua、Capuaといった諸都市の聖堂、モニュメントが対象となった。カッパドキアではギョレメを拠点とし、Zelve、Zemi、Ayvali、Gomeda、Ibrahimpaca、Balkanderesi、Cavsin、Kuzilcukur、Gulldere、Narなどの各地区に遺る岩窟聖堂、加えてギョレメ野外博物館を調査した。イタリア調査では中期~後期ビザンティン期のイタリアとビザンティンの繋がりを考える重要性が見えた。特にSquinzianoのSanta Maria a Cerrate聖堂にはビザンティンの強い影響が見られる「聖母の眠り」図があり、これに描かれた「聖母被昇天」図と合わせて興味深い。本聖堂では配置を変えて「眠り」が描き直されており、現在関心を持っている「眠り」の配置の変遷の問題にとって重要なモニュメントと言え、先行研究の調査中である。カッパドキアでは、過去調査時に撮影許可が下りなかった一部の聖堂で許可が出たため、中期ビザンティン期聖堂の貴重な資料を得ることが出来た。1212年の年紀を持つKarsi Kiliseは「眠り」図が良好に残っており、これは前回フラッシュ撮影不可だったものが今回は許可されたことも幸運であった。カッパドキアにおいてはむしろ後期の作例が不足しており、Karsiの作例は重要である。バルカン半島などでは後期に見られなくなったモティーフ、構図が生きていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度の南部イタリア、カッパドキア調査は概ね必要とする聖堂を調査できた。ただしCapuaのSantangelo in Formisは「最後の審判」図の調査が目的であったが、修道院全体が修復中で入堂不可であり、再度訪問の必要がある。令和元年度は引き続きカッパドキア調査を行う予定である。現在調査した聖堂について論文執筆の準備中であるが、文献の収集も概ね問題ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は夏季にカッパドキア調査を実施する。続く調査は、カッパドキアでの進捗状況に応じ、令和二年度もカッパドキアで行うか、もう一つの調査地として挙げているギリシア、クレタ島で行うかを判断する。トルコは現在政治、経済的に不安定さを増しており、そのような状況も渡航先の判断に関わるだろう。カッパドキアでは、前年度にできなかったウフララ地区の調査をまずは集中的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の価格が想定より廉価で購入でき、わずかではあるが残余額が生じた。令和元年度の書籍購入に併せて使用する予定である。
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