研究課題/領域番号 |
18K12245
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ビザンティン美術 / 中世キリスト教美術 / キリスト教図像学 / カッパドキア |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナウイルス流行の影響で当初予定していた海外調査が実施できなかったため、既調査で収集した画像資料の整理と再検討を中心に研究を進めた。カッパドキアにおける「聖母の眠り」図像の現時点での小括として論文を発表した。現時点で確認できた15聖堂の図像と、その配置について考察を行ったものである。掲載した撮影資料は過半数が未だ出版物に掲載されていない図像であり、基礎資料としても有用と思われる。本論文中ではカッパドキアのケペズ・キリセで見られるような「聖母の眠り」とその他聖母伝との積極的連関の可能性を指摘した。この連関に関する考察は、ビザンティン他地域の聖堂装飾プログラムへ敷衍できる可能性を持っていると考えている。 また、20年12月にはジョージアにおける聖堂装飾を撮影資料に基づき検討した結果を口頭発表した。ジョージアの「眠り」図にもまた古い構図がみられる点、特にジョージア国内においても隔絶した地域とされるスヴァネティ地方の聖堂は、聖堂装飾への「眠り」図をそもそも採用しない作例が多いなど、ビザンティン聖堂装飾の古い定型を維持していることが想像された。加えて「眠り」図と強く連関する主題として「聖霊降臨」が重要な位置にあることを指摘した。十二大祭として時系列順に並ぶ二主題ではあるが、単に並列して描かれる例だけではなく向かい合わせの配置など、より積極的に二図像の繋がりを示す配置が確認されたため、本内容をより追求して論文へ纏める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、当初予定していた海外調査が20年度は全く実施できなかった。このため、本来得られるはずであった聖堂の図像資料が不足した状況である。現在、過去に取得した資料を基に研究を進めているが、さらなる成果を得るためにはトルコ・カッパドキアおよびキプロスへの再度の渡航が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナによる渡航制限の状況次第であるが、制限が緩和されれば聖堂調査のためカッパドキア、もしくはキプロス島への渡航を計画したい。いずれも研究代表者がこれまで調査を行った土地であり、従前の調査で訪問できていない聖堂を重点的に調査する。また21年4月に行った口頭発表では、「辺境」としてのジョージアとロシアの類似性と特異性それぞれに示唆を得られたので、ジョージア、ロシアの聖堂装飾についてもより検討を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため予定の海外調査が実施できず、予算を使用せず最終年度延長を申請し、2021年度の調査費用とした。
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