研究課題/領域番号 |
18K12245
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビザンティン美術 / 聖堂装飾プログラム / キリスト教美術 / ジョージア |
研究実績の概要 |
2021年度はCOVID-19流行の影響が続き、前年度と同様当初予定していた海外調査が実施できなかったため、既調査で収集した画像資料の整理と再検討を中心に研究を進めた。 聖堂装飾についての調査を行うなか、しばしばその主題として描かれる十二使徒を含む図像についての再検討を試み、研究論文を発表した。バルカン半島、カッパドキアの壁画を中心に、様々な主題において画家がどのように十二人を選んだか、またその選択に意識的であったかを問うた。その結果、論文サブタイトルに挙げたような「典拠と神学的重要性」の間での揺らぎが指摘できた。この作業はビザンティン画家のあり様を考える上でも有効なものであったと言える。 加えて、ジョージア(グルジア)の聖堂装飾を中心課題として、口頭発表および論文の執筆・発表を実施した。口頭発表ではジョージアの「聖母の眠り」図像を取り上げそのプログラム的意味を検討した。前年度の研究でも示唆された通り、ジョージアの「眠り」を考察する上で「聖霊降臨」との関連性は今後とも追求すべきものであると思われた。研究論文では特にスヴァネティ地方の聖堂に集中し、今後の研究の基礎となる聖堂の装飾プログラムを確認した。本研究の目的である「辺境の図像」を考える上でジョージアの作例は重要な位置にあることが研究を通して再認識された。特にカッパドキアやロシアといった他の「辺境」とは異なる傾向を指摘することができ、ジョージア独自の聖堂装飾プログラムを考察しうるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19流行の影響により、当初予定していた海外調査が20年度に続き21年度も全く実施できなかった。このため、本来得られるはずであった聖堂の図像資料が不足した状況である。現在、過去に取得した資料を基に研究を進めているが、さらなる成果を得るためにはトルコ・カッパドキアおよびキプロスへの再度の渡航が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19流行の状況次第であるが、制限が緩和されれば聖堂調査のためカッパドキア、もしくはキプロス島への渡航を計画したい。いずれも研究代表者がこれまで調査を行った土地であり、従前の調査で訪問できていない聖堂を重点的に調査する。また21年度の研究では、「辺境」としてのジョージアとロシアの類似性と特異性それぞれに示唆を得られた。国際情勢の悪化によりロシアの再訪は困難であるが、ジョージアの聖堂装飾について研究を継続し、必要であれば現地調査を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行により予定の海外調査が実施できなかったため、予算を一部使用せず最終年度延長を申請し、2022年度の調査費用とした。
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