研究課題/領域番号 |
18K12267
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
井上 由里子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (70601037)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヴァレール・ノヴァリナ / 翻訳論 / アール・ブリュット / 障害 / 傷つきやすさ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヴァレール・ノヴァリナの演劇理論と言語創造においてアール・ブリュット理論がどのように受容されたか、また、テクストに摂取されたアール・ブリュット理論が俳優術においてどのような展開をみせるかを明らかにすることである。 本年度は、新型コロナウィルス感染症拡大のため研究計画の変更を余儀なくされたが、その一方で、障害者演劇に関する日本語・フランス語・英語の文献調査や動画視聴を行うことができた。それによって、日本ではまだほとんど紹介されていない、フランスやイタリアの演劇実践(アトリエ・カタリーズ、ピッポ・デルボーノ等)について知見を広めると同時に、本研究の鍵概念「政権力」「脱学習」「中動態」を結びつける「傷つきやすさ(vulnerability)」という視点を手にいれることができた。 また、2019年度から2021年度にかけて、他言語の翻訳家や研究者(ジュネーヴ大学、リール大学等)と進めてきたノヴァリナの翻訳論をめぐる研究の成果が、共著『La Republique des traducteurs. En traduisant Valere Novarina(翻訳家たちの共和国ーヴァレール・ノヴァリナを翻訳しながら)』として2021(令和3)年12月に刊行された。拙論「Tracer une double helice en spirale(二重の螺旋を描く)」では、キリシタン文学や代名詞など日本語の特性を生かした翻訳のあり方を提示したほか、ノヴァリナの翻訳論におけるアール・ブリュットの受容を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度にあたる2020(令和2)年度には、10月にドイツ人俳優を招聘し、ノヴァリナのテクストの本邦初の上演を行う計画を進めていたが、感染症拡大により海外からの渡航が難しくなり、先方と相談の上、今年度に繰り越すことにした。本年度2021(令和3)年度も海外からの招聘が叶わず、やはり次年度に繰り越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間延長が承認されたため、今年度実現できなかった計画を2022(令和4)年度に進める予定である。 具体的には、ドイツ人俳優を招聘しノヴァリナのテクスト上演とワークショップを開催し、研究成果を広く社会に還元したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の助成金の多くをノヴァリナのテクスト上演に伴う旅費と謝金に充てていたが、感染症拡大により計画が実現困難になったため、次年度に繰り越すことにした。
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