本研究成果の第一の意義は、コール・ブリュットという新概念と障害者演劇におけるその展開を解明することにより、従来のアール・ブリュットが作者の生きた身体を置きざりにしてきた傾向を顕在化させ、障害のある身体が芸術的にも社会的にも新しい可能性を拓くことを示した点にある。また学際的研究を通して、まだ日本で知られていないフランスの障害者演劇の実態を示すとともに、暗黒舞踏と障害のある身体との接点という新しい視点を提示した。さらにノヴァリナの俳優の演技において言葉と人間の関係が反転することを指摘し、ノヴァリナの言語の演劇性を示したが、この指摘には単なる言語実験と批判される作家像を修正する意義があると思われる。
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