研究実績の概要 |
当初、研究は「1930年代のアメリカにおける」という限定をつけていたが、研究の背景としてはトランプ政権誕生に至ったポピュリズムの興隆や白人労働者階級の問題があり、研究はつねに現在時と過去を弁証法的に往還するものとなった。 平成30年度には学会や研究会での発表は3件、12月頃から年度末に2つの論文を執筆したが、その発行は平成31年4月になった。論文の一つは、平成30年に学会のシンポジウムで発表したディストピア小説の近年のドラマ化を掘り下げたものである。もう一つは、平成30年12月に神戸大学で行われた「コンタクトゾーン」をテーマにしたシンポジウムで発表した、D・H・ロレンスとウィラ・キャザーという二人の作家がニューメキシコ州タオスで先住民に対してどのような観察・記録を行ったかということについての考察である。 より科研費採択課題に沿った研究としては、アースキン・コールドウェルとマーガレット・バーク=ホワイトの共著、『You Have Seen Their Faces』と ウォーカー・エヴァンスとジェイムズ・エイジーの共著、『Let Us Now Praise Our Famous Men』のイメージとテクストの関係性について考察を深めることができた。また、これに関連して、Catherine Morley, Nathaniel Mills, Paula Rabinowitzらによる1930年代のアメリカについての研究書を精読することができた。この成果の一部は平成31年のアメリカ学会におけるシンポジウムで発表する予定である。 さらに、平成31年度の日本英文学会における「ヒルビリー」をテーマとしたシンポジウムに登壇する予定だが、その準備として、現在の「ヒルビリー」についての分析を中心にしながらも、その状況を不況下の1930年代の状況と重ねながら考察した。これは現在引き続き考察を続けているテーマである。
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