2020年度は,感染症の蔓延状況にあったこともあり,新たな実験データの収集よりもこれまでの研究成果の公開に注力した.具体的には,これまでの成果をまとめた2本のブックチャプターを公刊し,さらに2本のブックチャプターの執筆及び2本の研究論文の作成を行った.公刊されたブックチャプターについては,これまでの研究成果を教育心理学の観点から初学者向けに解説したもの,研究成果を言語学者向けにまとめたものであった.また一本のブックチャプターは研究方法論についてまとめたもので,2021年度前期に公刊された.論文は形容詞の使い分けに関する論文を一本執筆中,更に状態変化動詞の第二言語習得に関連する一本の論文を投稿し現在査読中となっている状況である. 本研究期間全体の成果に関しては,本研究はまず2018-2019年の間に,子どもが動詞を使い分けるの際に,子どもが用いる言語以外の手法に着目してデータを収集,分析することができた.特に,ジェスチャーや比喩の同期関係,及び発達段階におけるそれらの利用の違いについては,これまでの研究では報告されていない興味深い結果が得られた.また,第二言語習得のデータに対し,これまで収集された第一言語習得のデータと同じの分析を行ったところ,習得対象となる言語の意味的性質(どのように対象をカテゴリー化するかのパターン)が,第一/第二言語習得の双方に共通して習得の難しさを決定する重要な要因になることが明らかになった. 公刊された研究成果としては,子どもの用いる色語彙の習得に関する論文は,認知科学の国際誌であるCognitive Science誌に採択された.研究期間の後半においては,これまでの結果を総括し,研究成果を理論的な観点からまとめた単著や,心理学や言語学の専門書にブックチャプターとして成果を発表することができた.
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