本研究の意義は,コミュニケーションの困難さの種類によって,子どもが異なる種類の記号を使い分けていることを明らかにした点である.学術的意義としては,形容詞や比喩表現,ジェスチャーを含む記号コミュニケーションの発達に,共有志向性の影響を認めた貴重なデータを収集することができた点が挙げられる.社会的意義としては,就学期以降,子どもは語彙を増やし,様々な言語表現を用いて自分の既知の情報を相手に分かりやすく適切に使うことを学ぶ必要があるが,本研究の結果は幼児期におけるその原初的な能力を明らかにした.このことは,就学期以降,特に低学年時の言語表現・コミュニケーションの教育に利用できる知見である.
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