研究課題/領域番号 |
18K12419
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀明 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70802627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 言語スタンダード / CEFR / 読字能力 / 評価尺度 / 文字 / 漢字 |
研究実績の概要 |
近年、欧州評議会が発表したCommon European Framework of Reference for Languages(以下、CEFR)が世界の言語教育に取り入れられ始めているが、CEFRやCEFRを参考にしたJF日本語教育スタンダード(以下、JFS)では読字能力を言語構造的能力の1つとして認める一方で、その具体的な内容や評価尺度については述べられていない。また、アルファベットなどの表音文字を用いる言語の外国語教育に比べ、日本語の文字種はひらがな、カタカナ、漢字と多様であり、日本語の読字能力の評価尺度を他の表音文字の言語と同様とするには限界がある。 そこで本研究では、これまで明らかにされていない日本語教育における読字能力の評価尺度の作成に向けた基礎研究として、CEFRの言語熟達度という基準に沿いながら、日本語の読字能力としての評価尺度案を明らかにし、その評価尺度案をもとに自己評価調査を行う予定である。 平成30年度はCEFR/JFSに記述された言語活動能力と言語構造的能力の能力記述文をレベルごとに抽出し、KH Coderでレベルごとの能力記述文の頻出語を抽出したり、共起ネットワーク分析を行ったりした。この分析により、各熟達度レベルの特徴を抽出し、先行研究をもとに評価尺度案の精緻化を行った。これらの研究により、A1レベルからC2レベルまでの読字能力の評価尺度案を作成した。 この研究過程において、日本語教育、識字などに関連する学会、研究会で発表を行うとともに、これらの成果をまとめた論文執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本語教育における読字能力の評価尺度の作成に向けた基礎研究である。そのため、初年度は読字能力の評価尺度の基礎となるものを作成することを計画していた。具体的には、CEFR/JFSの言語能力記述文をKH Coderでテキストマイニングで分析し、言語熟達度ごとの頻出語を抽出し、共起ネットワークから頻出語の共起関係を導き出すことで、先行研究で述べられている読字能力の評価尺度の試案の精緻化作業を行うというものである。初年度のこれらの作業はすべて達成できており、研究はおおむね順調に進展していると言える。ただし、次年度以降に予定している本尺度を用いた自己評価調査の準備はあまり進んでいないため、今後、この準備に注力していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究において精緻化した読字能力の評価尺度案の基礎資料が用意できた。今後は国内外の様々なレベルの学習者を対象に読字能力の自己評価調査を行い、読字能力の評価尺度案の妥当性を検証する予定である。また、そのほかにCEFRでは2018年に補足版が公開されており、その中ではPre-A1レベルも提示されるようになった。本研究において、このPre-A1の扱いについても今後、検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に日本語教育国際研究大会で発表する予定であったが、異なる共同研究の発表と重なり本課題での発表を行わなかったため、本課題からの研究費としての支出がなかった。ただし、来年度以降の海外調査での支出を予定している。
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